父のすごさを伝えたい!
加藤貞顕(以下、加藤) 青山さんがジャンプ写真を撮り続けてきた理由はわかったのですが、そのなかで、サラリーマンを題材にしようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
青山裕企(以下、青山) 亡くなった父親がサラリーマンだったんですよ。初めてジャンプ写真の個展をやった翌月(2006年1月)に、父親が倒れたんです。すぐに名古屋に帰って看病したんですけど、3週間ぐらいで亡くなってしまって……。
加藤 お父さんは、どんなお仕事をされていたんですか?
青山 トヨタ車の販売店で車の営業をしていました。でも僕は、父親が亡くなるまでどういう仕事をしていたのか全く知らなかったんですよ。仲は良かったし話もしていましたけど、父の仕事にはあんまり興味がなかった。
葬儀に会社の方がたくさん来て僕の知らないエピソードを洪水のように話してくれて初めて、父親の仕事ぶりといかに多くの人に慕われていたかを知りました。
加藤 それで、サラリーマンに対する見方が変わったんですね。
青山 そうですね。僕は写真の道で生きていくと決めていたから就活も全くしなかったし、もしかしたらサラリーマンみたいにはなりたくないなんて意識があったのかもしれない。でも父親の死で、そういったイメージが完璧に変わりましたね。サラリーマンってすごいな、って。
加藤 その気持ちが「ソラリーマン」を撮ることにつながったと。
青山 そうです。その後はもう、自分の知っているサラリーマン全員に声をかけるぐらいの勢いで撮りまくっていました。当時の気持ちを論理的に説明するのは難しいんですけど、とにかくいてもたってもいられなかったんです。
加藤 お父さんに対するいろいろな思いが募っていたんでしょうか。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。