日本にいたころ、私は正義感が強いタイプでした。
何かにつけて「これは正しい、これは間違っている」とジャッジしていたのです。 そして間違っている人を見ては、この人は間違っている、直さなければ、と無駄な正義感に燃えてイライラしていました。
ところがこのままマレーシアに来てみると、どうもうまくいきません。
ゆっくり仕事する人に「こうしたらもっと効率良くなるよ」と言うと嫌な顔をされ、「お茶を飲みながらゆっくり仕事するのがマレーシア流さ」と言われてしまったりします。それどころか、「お酒を飲むのはよくない」「男女一緒にいるのはよくない」と言う人すらいる。常識が複数あり、「答えが一つ」と言うのが邪魔にすらなることに気が付きました。
正解が「たくさんある」世界
例えば、マレーシアには学校にいかない子供達がいます。
知り合いのお子さんは、中学までずっと学校に行かず、家で学習していました。その後、中学で初めて普通の学校に通いました。
国民がインターナショナル・スクールに通うのも(お金があれば)自由です。わが子は、インターナショナル・スクールからホームスクール(フリースクールのようなもの)に移って自分のペースで学習しています。また、公立の学校は試験が厳しいので、ついていけずにインターナショナル・スクールに来る子もいたりします。
公立学校ですら、言語別(マレー語、中国語、タミル語)に別れている上に、宗教学校などもあって、それぞれが選択します。知り合いはムスリムのマレー人ですが「中国語を学ばせたい」と中華学校に入れるのだそうです。人によって、何を選択するかがバラバラです。
このように、相手の信条や宗教、バックグラウンドはさまざまで、なにごとにも実は正解はたくさんあります。
だから必要以上に立ち入らず、相手を尊重することが重要なのです。
これは、正解が1つであることに慣れきった日本人からすると、なかなか理解しにくい感覚です。正解がたくさんある感じに慣れるには時間がかかります。
相手の事は理解しようとしない、でも尊重する。
これが多様性の国マレーシアから学んだ態度です。世界は複雑であるということを知り、必要以上に全てを理解しようとしないこと。複雑なものを複雑なまま受け取り、その複雑さに耐えるのがここでの大人の態度です。
人の気持ちを想像しすぎない
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