「家庭内だと圧倒的に女性の方に権力がある」
ワイドショーに頻出している東国原英夫を見ていると、「自分はかつて相当偉かった」と「自分は今でも面白い」という両輪で動いている自意識がビシバシ伝わってくるが、その様子を眺めながら、「いや、でも今はもう偉くないじゃん」と「いや、別に面白くないよ」という両輪を用意して立ち向かいたくなる。ところが結局、その手の視聴者の物言いが、何を言われても乗り越える自分の補強に使われてしまう。思ったことを強く言いっぱなしにする状態をなんだかんだで重宝するのがテレビなのだと長年のキャリアで熟知し、その両輪でかっ飛ばし続けている。
東大入学式での上野千鶴子によるスピーチが話題になった直後、日本社会のジェンダーギャップについて、東国原は「家庭内だと圧倒的に女性の方に権力がある。でも数値化できないんですよ。そこも数字に入れたら、日本って女性の方が上になると思いますよ。そういう数字を入れてないところ、先生に忖度していただきたかったなと思いますね」(『バイキング』・2019年4月15日)と述べた。発言の全てが的外れなのってなかなか珍しい状態だが、番組が用意している「的」からは外れていなかったようで、スタジオは、彼の発言を受け止めながらわいわい盛り上がっていた。
「満を持して」を自家調達
これまで、組織の中で偉い立場になったことがないのでわからないのだが、人はその偉い立場ではなくなった時、どうやってその「偉い」を薄めていくのだろう。薄めないままいつまでも必死に保存している人の鬱陶しさを感じることはしょっちゅうなのだが、薄めた人は、その行為が自然だからこそ可視化されない。私たちが見るのは、いつまでも薄めない「偉かった」ばかりになりがちだ。
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