景行天皇、熊襲(くまそ)を討ち、九州を巡幸①
十二月五日、熊襲(くまそ)を討つことを協議しました。このとき天皇は、臣下たちにこう詔しました。
「聞くところによると、襲国(そのくに)※1に、アツカヤ(厚鹿文)、サカヤ(迮鹿文)という二人の熊襲の首領がいて、熊襲の八十梟帥(やそたける)と呼ばれる大勢の徒党を従えている。その勢いは当たるところ敵なしと聞く。少ない兵ではとても滅ぼすことはできないだろう。しかし、大軍を動かせば民の害になる。なんとか武力に頼らず居ながらにしてその国を平定できないだろうか」
すると一人の臣が進言しました。
「クマソタケル(熊襲梟帥)※2には二人の娘がおります。姉をイチフカヤ(市乾鹿文)といい、妹をイチカヤ(市鹿文)といいます。容姿はまことに端正ですが、心は雄々しい娘です。高価な贈り物をして、仮の宮にお招きなさいませ。そしてクマソタケルの消息を聞き出し不意を突けば、全く刃を血塗らずに敵は必ず敗れるでしょう」
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