いったい何をするつもりですか」 | 気宇壮大(二)1

豪腕作家として知られる伊東潤が描く、大隈重信の成長譚!
早稲田大学の創始者で、内閣総理大臣を2度務めた大隈重信という男は
どのような人物だったのか?
幕末の佐賀藩に生まれ、
明治期に藩閥政治から立憲・政党政治への道筋を切り拓いた男の思想と生涯とは。
青年期から最晩年まで、
「走る人」「闘う人」「創る人」「聞く人」として駆け抜けた、
令和版大隈像をお楽しみください。

 大隈と久米のやりとりは続いた。

「では、弘道館をやめるというのは本気ですか」

「ああ、本気だ。しかし、ただやめるのでは面白くない」

「と言いますと—」

 大隈が上半身を起こす。

「自分だけがやめるのは簡単だ。弘道館の教育方針を変えさせてからやめる」

「どうせ何かを献策しても、途中で握りつぶされるだけです」

「だろうな。だからもう方策は考えている」

「どうやって」と久米が問う前に、大隈が立ち上がった。

「北寮に行く」

 何のことやら分からず、久米はきょとんとしている。

 弘道館の内生寮は南北の二棟に分かれ、最大で六百人が寄宿できる。大隈が十八歳になった安政二年(一八五五)五月は、南北寮ともほぼ満員だった。どちらの棟に入るかは家老を頂点とする組で決められており、それが南北の派閥が形成される原因となっていた。

 立ち止まった大隈が問う。

「北寮で最も強いのは誰だ」

「えっ」と驚く久米を尻目に、広澤が答える。

「そりゃ、坂本文悦だろう」

「ああ、あの医者坊主か」

 医者坊主とは江戸時代初期、権威を付けるために出家姿の漢方医が多かったことに由来する。

「そうだ。いつも喧嘩しているので、相手の爪の跡が坊主頭に刻まれているという手合いだ」

 広澤が得意げに語る。

「馬鹿な男だ。だが、これを機に医学に専心できるようにしてやる」

 久米は大隈と広澤を見比べながら、おろおろしている。

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威風堂々 幕末佐賀風雲録

伊東潤

豪腕作家として知られる伊東潤が描く、大隈重信の成長譚! 早稲田大学の創始者で、内閣総理大臣を2度務めた大隈重信という男は どのような人物だったのか? 幕末の佐賀藩に生まれ、 明治期に藩閥政治から立憲・政党政治への道筋を切...もっと読む

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コメント

maito0405 大隈、猛牛のごとき行動力😅久米、ノイローゼになりそうで心配だわ(笑) 3ヶ月前 replyretweetfavorite