現代アートで大勢の来館者を集める森美術館の強みは「写真撮影OK」

美術館の展覧会といえば、作品の写真撮影はNGだという印象を持っている方もいるでしょう。ですが、海外の多くの美術館では撮影OKが当たり前になっており、国内でも森美術館は早くから撮影可能な展覧会を増やしてきました。その結果、SNSで展覧会の情報を見かけた人が大勢来館してくれるように。森美術館でSNSの「中の人」を務める洞田貫晋一朗さんが、撮影OKの狙いと苦労を語ってくれました。著書『シェアする美術』から紹介します。

「撮影OK」が「入場者数ランキング」に及ぼしたもの

森美術館の強みは、展覧会での写真撮影をOKにしていることです。現状、すべての展覧会で「撮影OK」にできてはいませんが、常に実現する努力をしています。

前述の「レアンドロ・エルリッヒ展」が「入場者数ランキング」1位を獲得したのは、作品の力、つまり展覧会そのものの魅力のおかげです。しかし、その魅力を事前に多くの人に知ってもらい、展覧会に行きたいと思ってもらえるきっかけになったのは、SNSによる情報の拡散でした。

ただ、みなさんにも経験があるかもしれませんが、SNSに投稿した情報は黙っていては拡散してはくれません。何かしらの仕掛けや工夫をしなければ、いつまで経っても火はつかないのです。

そこで拡散の「エンジン」になるのが、美術館内での撮影をOKにする試みです。来館者にどんどん写真を撮ってもらって、SNSにアップしてもらうのです。

森美術館が「撮影OK」の試みを始めたのは、2009年に開催した「アイ・ウェイウェイ展」からです。彼の個展以来、森美術館で開催する展覧会では「撮影OK」を実現する努力を続けています。

「レアンドロ・エルリッヒ展」では、アーティストの理解もあり、すべての作品を「写真撮影OK」「動画撮影OK」にすることができました。おかげで、【写真1】のようなインパクトあるものがSNS上に大量に拡散され、61万人もの集客につながったのです。


「レアンドロ・エルリッヒ展」ではインパクトある写真がSNS上に大量に拡散され、61万人もの集客につながった。
レアンドロ・エルリッヒ、《建物》、2004年/2017年
展示風景:「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」森美術館、2017年
撮影:長谷川健太、写真提供:森美術館
Courtesy: Galleria Continua

この不思議な写真、どうやって撮ったのかと聞かれることがよくあります。種明かしをすると、実は建物の壁面は床に設置されています。写真に写っている人は、みんな床に横たわっている状態なのです。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

2018年の美術展覧会「入場者数」1位・2位を獲得した秘密がここにある

この連載について

初回を読む
シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

洞田貫晋一朗

森美術館のSNS運用を手掛ける洞田貫晋一朗さんの著書『シェアする美術』から、全12回にわたって連載形式で本の中身を紹介します。国内の美術館では随一のフォロワー数を誇る森美術館ですが、そこに至るまでにどんな工夫がなされてきたのでしょうか...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

noguchi_writing 美術館でカシャカシャピコンピコンいわしてるのを見ると、Microsoftの「Microsoft Pix」というカメラアプリを使うとシャッター音出ないよ!と言って回りたくなる……。 https://t.co/YuQNP1CQWv 約2ヶ月前 replyretweetfavorite