天才を自覚したのはいつ?
枡野浩一(以下、枡野) 岩崎さんが初めて「自分は天才だ」と自覚したのはいつだったんですか?
岩崎夏海(以下、岩崎) 6歳か7歳のときですね。印象派のアンリ・ルソーという画家がいるんですけど、その絵を見て、「あ、この人が言おうとしていることはわかるな」っていう感覚を抱いたんですね。それで、家族に「この人はこういうことを描いているんだ」ということを説明したら、全然わかってもらえてなくて。そのときに、ルソーのすごさを理解できる自分は天才なんじゃないかと思ったわけです。
加藤貞顕(以下、加藤) そんなに小さい時に。
岩崎 ルソーの存在を教えてくれたのは母親で、彼女はすばらしい芸術を見つけてくるセンスはたしかにある。でも、自分がいいと思う芸術を、概念的には理解できていなかった。感覚的には「ルソーはすばらしい」ってわかってるんだけど、「なぜ、すばらしいか」がわからないし、説明ができなかった。
加藤 その説明は難しいですよね。普通の人にはできないですよ。アンリ・ルソーはどういう絵を描いているんですか?
岩崎 たとえば、ライオンが真横から描かれている絵画。一見下手に見えるんだけど、そうじゃなくて、わざとやってるんですよね。
加藤 「真横から描く」というのは、絵に慣れている人たちからすると、カッコいいものではないということですか。
岩崎 そうなんです、絵が下手な人の描き方。でも、絵が下手な人がそう描くってことは、「そこに人間の本性や本質的な何かがあるんじゃないか」ということをルソーは感じて、あえてやっている。とても高度な取り組みなんですよね。
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