『やるドラ』というシリーズのゲームをご存知だろうか? 僕は今まで数多くのゲームをプレイしてきたが、1番好きなゲームを挙げるとしたらこれだ。
『やるドラ』シリーズは、プレイステーションで1998年から発売されていたゲームソフトである。「みるドラマから、やるドラマへ」という触れ込みで、いわゆる自分の選択肢によってストーリーが変わっていき、様々なエンディングに導かれるというゲームだ。シリーズなので、僕が中学1年の1998年に『ダブルキャスト』『季節を抱きしめて』『サンパギータ』『雪割の花』という4タイトルのゲームが発売され、この年、『やるドラ』シリーズによって僕の二次元への向き合い方はガラッと変わった。
最初に知ったのは『ダブルキャスト』のテレビCM。「あなたの選択でストーリーが変わる」という宣伝で興味を持ち、親に買ってもらったのだった。買ってもらったゲームを初めてプレイする時の興奮はかなりのものだ。もらったプレゼントの中身を早く見たい気持ちを抑えながら、包み紙を破らないように丁寧に開け、メーカーと制作会社の紹介映像と、タイトル画面の前に出るオープニングを一旦全部見る。そして本編をプレイするのだが、いざゲームを進めていった僕は別の衝撃を受けた。ゲーム本編が全てアニメーションなのだ。オープニングがあり、登場人物が出てきて、選択肢を選んで進んでいくのだが、進めど進めどずっとアニメなのである。どの選択肢を選んでもその先でアニメが流れ、全てのセリフに声優さんが声を当てている。
あまり普段ゲームをしない人に説明すると、普通こういった類のゲームは、文字でのナレーションベースで進んでいき、1シーンに1枚絵がある程度か、良くて、自分以外の登場人物が画面の真ん中に出てきて、声優さんの喋りに合わせて口が動き、本当に大事なラストシーンだけアニメーションに切り替わる程度なのである。ゲーム中、幾度となく出てくる選択肢ごとにアニメーションがあるというのは、膨大な作画とアフレコの量なのだ。今思うと、あのアニメーションの量で、作画のあの綺麗さは、理解を超えている。中学1年の僕は「すごい!! これアニメをプレイしてるよ!」と興奮しながら畳の上を転がり回ったものである。
内容は4作全てが「一人暮らしをしている主人公が、記憶喪失の女の子と出会う」というものだ。これをプレイし始めた頃、自分も大人になったらこんな出会いがあるかもしれない、記憶喪失の女の子には優しくしよう、と思っていた。僕は今一人暮らしだが、未だに、記憶喪失の女の子に出会って成り行きで共同生活が始まらないものか、と思うことがある。実際に今、記憶喪失の女の子が現れて自分の家に泊まることがあれば、ずっと頭のどこかに“強盗殺人”の恐怖を感じずにはいられないだろうが。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。