僕はアニメ好きにもかかわらず、リアリストでもある。
アニメや漫画の中でも最近1ジャンルを確立しているのが、可愛い女子高生達が趣味やスポーツに打ち込むことを描いた作品だ。例えば「女子高生×バンド」や「女子高生×キャンプ」だったり、「女子高生×バイク」や「女子高生×戦車」なんて作品もある。それらはおおよそ女子がハマらなそうなものの場合もあるが、女子高生がそれをしているというギャップがまた登場人物を可愛く見せているのである。例えが合っているかはわからないが、女の子が男物の大きめのYシャツを着ているのを見て可愛いと思う感覚と似ている。
そういった「女子高生×◯◯◯」という作品で、僕が特にハマっているアニメがある。『ヤマノススメ』というアニメだ。2013年にアニメ第1期が始まり、現在(2018年夏クール)アニメ第3期が放送中の、女子高生が趣味で山登りをするという作品である。
僕はこのアニメがかなり好きで、聖地巡礼として舞台となった埼玉県飯能市に行ったり、登場人物が登った日本の山へ実際に登ってみたこともある。アニメの聖地が山で、登頂することが巡礼なので、このアニメに限り聖地巡礼が本来の意味に近付いている気がする。
物語は高校1年生で主人公の雪村あおいちゃんが、小学校時代を一緒に過ごした倉上ひなたちゃんと高校で再会し、ひなたちゃんに山登りに誘われ、そのままハマっていくという話だ。あおいちゃんやひなたちゃんの山登りの格好や、汗をかきながら山に登っていくのを見ているだけで、視聴者は心を掴まれる、俗に言う“萌える”のだ。しかし、僕がこのアニメを好きな理由は他にもある。
このアニメは、金銭感覚が抜群なのである。女子高生が女子高生らしい金銭感覚を持っている。登場人物が何かをするために、その物語の世界が登場人物の都合のいいように捻じ曲がる、いわゆる“ご都合主義”というものがないのだ。例えばこの作品でいうと、山登り用のリュックサックを買いに行くシーンがある。あおいちゃんは登山用品の専門店で気に入ったリュックを見つけるが、50%オフで5,250円という値札を見て「安くなってはいるけど高いなぁ」と思うのである。そう、リュックが50%オフで5,250円は高いのだ。これぞリアルな女子高生の感覚ではないだろうか。おこづかい制でやりくりしている女子高生にとって、いきなりの5,250円という失費はまぁまぁ痛いはずだ。このアニメはそこが描かれている。
よくあるアニメの流れとして、一緒に山登りをする友達に、有名な財閥の社長令嬢で、とてつもなく大きな屋敷に住んでいて、毎日の登下校は執事の運転するリムジンの女子高生がいる、というようなのがある。その子の名前を仮に財前金美(ざいぜんかねみ)としよう。その金美が山登りをする周りの友達に、女子高生では到底買えない値段の登山グッズを一式買い与えるのである。当然金美の財産はその程度の失費ではビクともしないし、登場人物も皆フル装備で物語を始めることができる。物語が進むにつれて必要になってくる道具は大体金美が揃えてくれて、夏になれば金美が「海岸沿いにうちの別荘がありますの。そこで合宿なさらない?」と言い出し、次のシーンでは登場人物たちが水着で海にジャンプしていることだろう。それではあまりにも乱暴だ。