「いま、好いてる男のことを思い浮かべなさい」
アニ子に言われるまま、ユウカは渋沢のことを思い浮かべた。
「どんな服を着ている?」
「え!? 服なんか思い浮かべませんよ」
「裸で思い浮かべたんか? 普段裸で出歩くわけないんだから、服も一緒に思い浮かべておくれ」
裸で思い浮かべるという言葉にハッと反応してしまったが、アニ子があのことを知ってるわけもないんだからと冷静になって、渋沢の服も一緒に思い浮かべた。
白いポロシャツに、ベージュ色のチノパン。
ユニクロの広告から飛び出してきそうなくらいオーソドックスな服。 渋沢はこういうところは普通なのだ。
「相手はなんと言っとる?」
アニ子がユウカに問いかけた。(え、想像上の人間に何かしゃべらすの?)
ユウカは渋沢が言いそうなことを思い浮かべた。
「ユウカさん、好きだよ」
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