自分はアジア人」って思ったことある?

以前、フランスに住んでいた牧村さん。その時にはじめて「あ、そういやアジア人なんだな」と思ったのだそうです。普段日本で生活していると、自分がアジア人であることを意識することは滅多にありません。「アジア」というと、タイやフィリピンなどを思い浮かべ、その外側に島国「日本」が浮かぶ、というような感覚を持っている人も多いと思います。牧村さんはそんな「自分のとこ」と「その他」に世界を分けることについて考えていきます。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。

「フランスに住むの、お味噌も梅干しも買えなくて大変じゃないの」
「いや、アジア系スーパーとかで普通に売ってるよ」
「へえ〜! アジアのものだけじゃないんだ〜!」
「!?」

……という会話をしたことがある。

「いや日本もアジアじゃん」とツッコミたい気持ちをこらえ、聞いてみた。

「アジアのものって例えば?」
「えー、ナンプラーとか?」

要するに「アジア」というと、タイとかベトナムとかフィリピンとかを想像しているのだ。そして「アジア料理」とはフォーとかビーフンとかナシゴレンとかだと思っていて、寿司とか天ぷらとかは含めていない。

わかる気がする。

バナナが熟しナンプラーが香る「アジア」があって、その外側に島国「日本」が浮かぶ。なんとなくそんなふうな世界観で生きてきた気がする。

こうやって「自分のとこ」と「その他」に世界を分けちゃう感じ、あるあるではないだろうか。例えばわたしは今までわりとカジュアルに「欧米人」って言葉を使ってきた。けれど、「欧米人」って言葉は、冷静に考えると「欧(ヨーロッパ)米(アメリカ)人」ってことだ。つまり「地域+国」だ。扱いがわりと雑。そうやって誰かに対しては「欧米人」って言うのに、自分の国はアジアって地域に含めてこなかった。「アジア日本人」って思ったことがなかった。「アジア人」とすら思ったことがなかった。世界が「自分のとこ」と「その他」であった。

はじめて「あ、そういやアジア人なんだな」と思ったのは、フランス移民局に行った時だ。移民局は国籍ごとに窓口が分かれていて、日本国籍者は「L'Asie et le Pacifique(ラジィ・エ・ル・パシフィーク/アジア環太平洋)」窓口に並ぶ。あと、アメリカの学生がやっているアンケートに答えた時もそうだった。「Asian/Europian/African(アジア人/ヨーロッパ人/アフリカ人)」みたいな選択肢が並んでいて、「Japanese(日本人)」はなかった。「Homo sapiens(人類)」もなかった。「アジア人(Asian)」と回答せざるを得なかった。

フランスで「Asiatique(アジアティーク/アジア人)」と呼ばれる感じ。 アメリカで「Asian(エイジアン/アジア人)」と呼ばれる感じ。

自分、アジアティーク?
自分、エイジアン?

自分をアジアティークともエイジアンとも思ったことがないまま、自分は日本を生きてきたのに。

めちゃんこ愛国フランス人のマルセルさんがいう。

「わが国フランスと違い、アメリカは歴史が浅くて、食文化なんか存在しない。フランス語ではチーズのことを“フロマージュ”と呼ぶが、私はマクドナルドのチーズバーガーを“バーガー・オ・フロマージュ”と呼ぶことに絶対に反対する。あんなぺらぺらの黄色いシートを“フロマージュ”と呼ばせてなるものか! あれは絶対に“チーズバーガー”だ。あれはあくまでもアメリカ人のチーズであり、我々フランス人のフロマージュとは別のものだ!!」

マルセルさんに「欧米人」、つまり「ヨーロッパアメリカ人」という日本語の存在を説明したら悲鳴をあげそうだなと思う。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません