景行天皇、熊襲(くまそ)を討つ。カムナツソヒメの進言
十二年七月、熊襲(くまそ)※1が背(そむ)いて朝貢しませんでした。
八月十五日、天皇は筑紫に御幸(みゆき)しました。そのとき天皇は、南方をはるかに見て、
「南の方に煙が盛んに立ち上っている。賊がいるに違いない」
と言ってそこに留まり、まず多臣(おおのおみ)※2の祖・タケモロキ(武諸木)、国前臣(くにさきのおみ)※3の祖・ウナテ(菟名手)、物部君(もののべのきみ)の祖・ナツハナ(夏花)を遣わして状況を視察させました。
そこにカムナツソヒメ(神夏磯媛)という巫女がいました。その一族は非常に多く、一国の首領でした。
天皇の使者が来たことを知ってただちに磯津山(しつのやま)※4の賢木(さかき)※5を抜き取り、上の枝には八握剣(やつかつるぎ)※6を掛け、中ほどの枝には八咫鏡(やたのかがみ)を掛け、下の枝には八尺瓊(やさかに)※7を掛けて、白旗を船の舳先に立てて、参上して謹んでこう言いました。
「どうか我らに兵を差し向けないでください。我が一族には決して君に背くような者はおりません。今すぐに帰順いたしましょう。
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