第3章 敏感すぎて生きづらさを抱えてしまう子どもたち
いい子、共感性の高すぎる子が危ない!
敏感すぎる人は、些細なことも気になってストレスになりやすく、それが引き金になって心身のバランスを崩しやすいという面があります。
この章では、敏感さが原因で深刻な症状に陥ってしまった子どもたちの例を紹介しまし ょう。
こんな症例がありました。
小学校のときから、学級委員長やクラブ活動のキャプテンを任され、6年生のときには 生徒会副会長を務めた子です。成績もいつも上位で、本当に優秀です。
小学校5年生ぐらいから過呼吸があったらしいのですが、そのころはそれほど苦しくは なかったようです。それが中学生になって過呼吸に加えて頭痛、抑鬱の症状が出て、最初 にかかった医師から、広汎性発達障害と診断されます。
私が診ることになったのは中学2年のときでした。たしかに知能に言語性優位の偏りはありましたが、発達障がいとは思えないなあ、というのが私の見解でした。
優等生でみんなから頼りにされます。それに対して、イヤが言えない。何でもすべて受 け入れてしまう。何かあると放っておけなくて、グループ内の対立などの調整役を担って しまうのですが、じつはそういうことが心の負担になっているのではないか、私はそう思 いました。
穏やかないい家庭に育っていました。ただ、ご両親ともにHSPです。私は、この子も HSCであるがために、断れずにいろいろ引き受けてしまうことで、過剰なストレスがか かっていると診ていたのです。
いろいろ話を聞くと、学校で先生が前にした話をまったく思い出せなかったり、以前に 書いたノートを見ても自分が書いた記憶がなかったりする解離症状が起きているとわかり ました。かなり深刻な心の状況です。
高校1年のときは、テストで学年一番をとりました。ところが2年になったころから、 怒りっぽい、疲れやすい、神経過敏、注意散漫、人の声が悪口に聞こえる、体が動かない などの症状が次々と出るようになります。それでも、クラブ活動や生徒会などいろいろが んばっていたのですが、がんばればがんばるほど体に変調が出てしまいました。
本当につらい思春期だったと思います。
高校卒業後、実家から遠く離れた土地の学校に進学しました。すると、体に出ていたさ まざまな症状が消え失せ、ウソのように元気になりました。勉強にサークル活動に精を出 しているそうです。「思春期のあれはなんだったの?」という感じです。
ずっと「いい子」を演じていたけれど、知らない土地に行き、知らない人ばかりの中に 入ったことで、もういい子をやる必要がなくなった。しがらみをすべて捨てて自由になれ たことで、心が解放されたのではないかと私は思っています。
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