「最高の先生たち」に会いに行く
とはいえ、そこで学べることには限界がありました。
今なら、イヤな気分やうつから解放されていくためには「今、自分がどういう状況なのかを理解すること」「自分の物事のとらえ方のクセと、自分が向き合うこと」が大事だということもわかっていますが、そこに到達するだけの知識は得られませんでした。人を救えるスキルも身についてはいませんでした。
それでも、下園さんが見つけてくるいろいろな療法の実験台をやったおかげで、その効果も、副作用や悪いところも、身をもって理解することができました。
ほかにもいろいろな発見がありました。
イヤな気分もうつも、一人ひとりケースが違うので、具体的にどうしたらいいのかは、自分で向き合っていくしかないということ。
本を読むだけでもエネルギーが消耗して、よけいに落ち込んでしまうことがあるので、状態がよくないときは、本を読まないほうがいいこと。
「自分が今どういうエネルギー状態にあって、何ができるか」を考えながらやっていかなければならないということ。
最終的な目標は臨床心理士だったので、働きながら放送大学でも学び始めました。ここのスクーリングの講師陣には恵まれて、実験心理学もできたし、九州大学で卒業研究までさせてもらえました。大学院で修士論文を書くためにも卒業論文は必須だと思っていたので、ありがたかったです。
また、学生の間は学割が使えるので、とにかくいろいろな治療法に当たろうと思い、かなりお金をかけて、いろいろな講習を受け続けました。
心理学関係の本をたくさん読み、その分野の大御所や尊敬できる人の名前を憶おぼえていたので、学会の懇親会には必ず参加して、トップの人たちに会いました。
そういう先生たちは、人として同じ目線で、わかりやすい言葉で、包み込むような話し方をしてくれます。「ぼくもずっと勉強だと思うんだよ」という感じで、驕ったところがまったくないし、質問するとすごくわかりやすく教えてくれます。
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