「カウンセラーになりたい!」
あるとき、同じ入院患者で、私よりも若い男の子と話をしました。「死にたい、死にたい」と言うのですが、今まで私もいろいろな人に話を聞いてもらったし、話を聞くことならできるかなと思い、「そうね、そうね」「大変だったね」と言いながら聞いていたのです。
つらい話ばかりでしたが、ずっと話を聞いていると、ある瞬間「でもね」と言い出しました。
「でもね、ぼく、本当は夢があるんですよね」
「えっ、なに、なに?」
「ぼくね、お料理がすごく好きなんです。カレーが好きなんですよ。ここを退院して、自衛隊を辞めたらおいしいカレーを出す店を作ろうと思っているんです」
あの落ち込んでいた彼はもうそこにいなくて、目がキラキラしているのです。
「人の話を聞くこと、自分のことを受け止めてもらえることって、こんなにすごい力があるんだ!」とそのとき思いました。
私はもともと変わり者だったので、その頃から気づいたことがあると何でもノートに書いていました。最初は苦しいから書いていた日記なのですが、嫌なこともよかったことも、何でも書くようになっていました。
それをやっていると、ひらめいてしまうのです。閉鎖病棟に入院しているにもかかわらず、私はそのとき「カウンセラーになりたい」とひらめいたのです。
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