前号で、コストカットについての私の決意を語ったが、そのひとつが「フラワーアレンジメント」だ。
アメリカの結婚式では、通常、結婚式や披露宴の会場の予約とは別に、自分たちで花屋に「フラワーアレンジメント」を依頼しなければならない。平均では3000ドル(約32万円)程度だが、近辺に住む知人によると5000ドル(約53万円)かかると言う。私はこれを自分でやろうと思いついた。材料費を差し引いても30万円くらい浮かせるかもしれない。これだけで意欲が湧いてくる。
以前にも話したが、自分の結婚式を義母に任せた私の「結婚式のフラワーアレンジメント」の知識はゼロに近い。義母に尋ねたら「私が手配する」と言い出すに決まっているので、そっとインターネットで情報収集した。
ブーケをDIYでやるには?
まず学んだのは、自宅の裏庭で行うバックヤードウエディングには次のフラワーアレンジメントが必要だということだ。
2.メイド・オブ・オナー(花嫁の助っ人役の女性)とブライズメイド(式で花嫁の横に立つ親しい女性たち)が持つブーケ
3.花婿、ベストマン(花婿の助っ人役の男性)、グルームズマン(式で花婿の横に立つ親しい男性たち)、花嫁の父が胸につけるブートニエール
4.フラワーガールがバージンロードに撒く花びら
5.テーブルのセンターピース
6.会場のあちこちに飾るフラワーアレンジメント
7.式のときのアーチに飾るフラワーアレンジメント
これを自分でやるために必要なのは、スキルと花(+道具)。簡単だ!
まずはスキルを身につけるためにYouTubeでブーケの作り方を学んで練習した。ことに、美しい薔薇のブーケを作るための準備として「がくと葉っぱを取り除く」というのは開眼的な学びだった。形を保持するための輪ゴムも強い味方である。白いサテンのリボンやパールが頭についたピンも必須だ。これらのテクを取り入れるだけで、驚くほどプロっぽいブーケができる。
ブーケを作る前に、まず葉っぱとがくを取り除く
そのうえで新郎新婦から好みとリクエストを聞き、結婚式のテーマに沿ってブーケをいくつかデザインしてみた。ブーケが決まれば、それに合わせて会場全体のフラワーアレンジメントが決められるので、まずはブーケだ。
いろいろ作ってみて新郎新婦の意見を聞いてみた。野草が好きな花婿のベンの好みを聞いたバージョン(左下)も
私は上記の真ん中のものがかなり気に入っていたのだが、花嫁は「大きなブーケは持ちたくない。シンプルで小さいほうがいい」と言う。花嫁のリクエストに応え、結婚式のテーマカラーである赤と白に統一した右端に近い小さめのブーケに決まった。
フラワーアレンジメントの小道具もコストカットできる!
次に取り組んだのは、テーブルの上の「センターピース」と会場のあちこちに飾るフラワーアレンジメントだ。
フラワーアレンジメントのヒントを得るために一番役立つソーシャルメディアはピンタレストだ。すごく参考になるのだが、下手をするとこの世界に吸い込まれてしまって何時間も無駄にすることになるから要注意である。自分のメモ用にピンし始めたら、それをフォローする人まで出てきて、この世界の深さと恐ろしさを知った。
フラワーアレンジメントのアイデアを得るのにぴったりのピンタレスト
どう考えても結婚式の前にひとりでやれることは限られているので、手間がかからず見栄えが良い小道具を使うことにした。
思いつきのひとつはナンタケットバスケットだ。本物は軽く何万円から何十万円もするが、ウエディングのお飾りに本物は必要ない。ナンタケット島の観光客相手の店で(たぶんメイドイン・チャイナの)土産用の大きな籠が1個30ドル(約3200円)だったので、店に残っていた8つを買い占めた。
ナンタケットバスケットと同じように「ガーデン・ウエディング」のテーマを際立たせるものを考えているうちに目についたのが、ブリキのじょうろだ。大手の金物店で見つけたのは1つ25ドル(約2,600円)ほどしたのだが、イケアだとなんと5.99ドル(約630円)だ。これらは、会場を飾るだけでなく、披露宴が終わった後には、新郎新婦やお手伝いをしてくれた友だちの記念品として持ち帰ってもらうこともできる。ざっとその数を計算して20個買った。
ナンタケット島の土産物店で買った「なんちゃってナンタケットバスケット」とイケアのブリキのじょうろ
記念品にするためにアクリルペイントで手描きし、削り落ちないようにシーリングのスプレーをして乾かしているところ。
花嫁の母とウエディング・プランナーを兼任は大変!
次は花の調達だ。
練習用の薔薇やユーカリの葉っぱは、「トレーダージョーズ」というスーパーマーケットで買ったのでひとつのブーケを作るのにかかった費用は3000円以下だった。だが、必要な花があるときとないときがあるスーパーマーケットをあてにはできない。
ネットで注文してDIY(Do It Yourself、自分でやる)セットを送ってくれるサービスもある。だが、最低限のセットでも1000ドル(10万円)程度はかかる。花市場で大量に花を買うことも考えたが、花市場に行くためにはライセンスが必要なのでこれも不可能だ。ネットで大量に花を注文する方法もみつけたが、「届いたら全部しおれていた」という可能性もあり、リスクが高すぎる。
そこで、近所の花屋さんに大量の花の注文ができるか相談してみた。
オーナーのナンシーは、「結婚式用のフラワーアレンジメントを自分でやる」という私の計画を聞いて、やや呆れたような様子だった。
「必要な花の種類と量さえ5ヶ月くらい前に教えてくれたら、注文してあげる。新鮮なのを買うから冷房さえ強くしておけば1週間は持つ」と言ってくれたのだが、含みのある笑みを浮かべて「花嫁の母は忙しいわよ。本当に花をアレンジする時間があるの?」と注意されてしまった。
コストと手間をカットするもうひとつのテクニックは、「種類を減らす」ことだと思った。ウエディングのテーマカラーに沿って白い紫陽花、赤い薔薇、カスミソウに絞れば、それらをカットして籠とじょうろに放り込むだけでいい。きっと数時間もあればできるだろう。そう、楽観的に判断して「大丈夫です。自分でやります!」と胸を張って答えた。
しかし、結婚式を数カ月後に控えたころ、不安がどんどん膨らんできた。花嫁の母とウエディング・プランナーを兼任する私が結婚式の直前にやらねばならないことが多すぎる。前もってできないことだらけなのだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。