1 ダンディ一位に選ばれた三島由紀夫
高級感があり、都会的
一九六〇年代以降の「カッコいい」に影響を及ぼしたアメリカ発の概念が「クール」であり、「ヒップ」だったのに対して、ヨーロッパから輸入された概念の一つに、「ダンディdandy」がある。
尤も、こちらは一九世紀の概念であり、フランスでは、ほとんど死語化している。「カッコいい」に相当する言葉は、六〇年代には貴族的な「エレガンスélégance」に対して、より大衆的な「シックchic」があり、これも日本語の「カッコいい」に影響を与えているが、今日ではやや年配の人が使う言葉である。同様に、「クラスclasse」というのも、幾らか古風な「カッコいい」で、若者たちは、「スティレstylé」という表現を好んでいる。元々は、「しつけが行き届いた」といった意味だったが、現在では英語の「スタイリッシュstylish」に近い、〝今風の〟というニュアンスになっている。
「ダンディ」や「ダンディズム」は、日本語では、些かオジサンっぽい言葉ではあるが、まだ死語となっておらず、男性誌の特集などでは「定番スーツのダンディな着こなし」だの「五十代からのダンディズム」などといった言葉が躍っている。
白洲次郎が特集される時には、必ず「ダンディズム」という言葉が枕につくし、桑田佳祐には、《真夜中のダンディー》(一九九三年)というヒット曲がある。
アパレル企業レナウンのブランド「ダーバンD’URBAN」は、今でも「ダンディ」をキー・コンセプトにしている。ある世代以上の人は、アラン・ドロンが出演し、最後に「D’URBAN c’est l’élégance de là moderne.(ダーバン〝おとなの心〟)(1)」というキメ台詞を言うCMを覚えているだろう。ブランドヒストリーによると、「日本一のかっこいい服を、世界で最もかっこいい男に着せたい」というコンセプトだったそうだが、アラン・ドロンは、アメリカ的な「クール」とも「ヒップ」とも違う、フランス的な「ダンディ」の象徴として、日本人に強烈な印象を残したのだった。
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