アニメのキャラクターは生きている

アニメや漫画をこよなく愛する、ハライチの岩井勇気さんのコラム連載がスタート。第1回は、あまりにアニメを観続けることで、二次元と三次元の境目が曖昧になってしまった、というお話。連載のタイトルにもなった名言「でもあの子、俺じゃなくて主人公のこと好きなんだよな」が刻まれた記念すべき回です。

※このコラムは、雑誌「TV Bros.」2018年7月号から転載されたものです。

僕の目から見るお笑い芸人の世界は、古きを重んじるが故に、割と近代的な音楽やアニメやゲームといったサブカルチャーは軽視されている。僕はそんなお笑い芸人の中でも、最近のアニメや漫画やゲームが好きな、いわゆる“現代っ子”だ。

アニメで言うと、今1クールに新しく始まるアニメは毎回40本近くある。僕はその40本近くを3話ぐらいまでは全て視聴する。好みでない作品は3話近くで観るのをやめてしまうが、大体40本中25本くらいは最終話まで観る。撮り溜めたアニメは毎日夜中に観ているので、ほとんどの日は寝ようと思って寝ているのではなく、アニメを観ながら寝落ちしてしまっている状態だ。

なぜこんなにアニメを観るかというと、仕事だからと言う理由や、使命感からではなく、もし自分が面白いと思うアニメを見逃してしまっていたら……という気持ちがあるからだ。そして、自分の為に観ているので自慢する気もない。「1クールに40本アニメ見てます」より「1作品の制作に携わってます」と言う方がよほど自慢になると思っている。最近よく“にわか”という言葉が使われているが、アニメをどれだけ観ていようが視聴者なんて全員“にわか”だ。そう呼ばれないのはその作品の制作に携わっている者だけのはずである。そしてこの言葉がどれだけ色んなものの間口を狭めているかとも思ってる。そんな事を頭の隅で考えながら自分なりにアニメを楽しんでいるが、少し困ったこともある。

アニメの世界を二次元、それに対して現実世界を三次元なんて言ったりする。僕は最近、その二次元と三次元の境目が曖昧になってきているのだ。

まず、結構な作品数を観ているうちに、登場キャラクターは物語を面白くする為の材料ではなく、自分と同じように“生きているもの”だと思うようになった。生きていて、自分と同じように日常生活があると思っているので、毎週月曜日に放送のアニメであれば、「あのキャラクター達は火曜日から日曜日までは何をしているんだろう?」と考えてしまうのである。ラブコメの作品で、自分好みの女性キャラクターが出てきたとしても、「でもあの子、俺じゃなくて主人公のこと好きなんだよな」と思って少し悲しくなる。でも最終的に主人公と結ばれると「よかった〜」と思うので、自分に対して「俺は好きな女の子の本当の幸せを願う、なんていい奴なんだ!」と思うこともある。しかし、そこまではまだいい。「俺は好きな女の子の本当の幸せを願う、なんていい奴なんだ! 視聴者に1番人気出るタイプのキャラクターだぞ」と、さも自分を登場人物の一人のように思うこともあるので、いよいよ二次元側からではなく三次元側からも侵食しはじめている。

さらに、アニメの舞台になった場所を巡る、いわゆる“聖地巡礼”をしていても「もし登場人物にばったり会ったらどうしよう」と考えてしまうし、テレビ局で仕事をしている時に「別のスタジオで音楽番組の収録してるらしいけど、あの作品に出てたアイドルユニット出てたりしないかな」と思ってしまう。一度、家でぼーっと観ていたバラエティ番組に、声のいい若手俳優が出ていて「あれ、この俳優の声アフレコしてる声優さん誰だろう?」と考えてしまった時は、さすがにゾッとした。

好きなキャラクターのグッズを買う時もそうだ。「俺はあのキャラクターが好きでグッズを買いに来たけど、あのキャラクターのグッズやフィギュアを大量に部屋に置いている事を、あのキャラクターに知られたら気持ち悪がられるんじゃないだろうか」と思い、買うのを躊躇してしまう。そこにくるとアイドル系のアニメは画期的だ。どれだけ好きなキャラクターのグッズやフィギュアを集めて部屋に置こうが、キャラクターは気持ち悪がったりしない。なぜならアイドルだからだ。相手がアイドルである限り、その自分の行いは献身的なファンの行動という事になる。しかし、好きなキャラクターが一般人だったりすると歪んだ愛情という事になりかねないのだ。

登場キャラクターを“生きているもの”と思う事によって、こんな厄介な考えにまで及んでしまう。しかし一方で、実はそんな風に妄想するのを楽しんでいる自分もいるのである。これから僕はこのコラムで自分の好きな事について、妄想を膨らませながら書いていこうと思う。ただのアニメや漫画やゲーム好きな“現代っ子”の戯言かもしれないが、どうかお付き合いいただきたい。

<今月の一言>
同期のサンシャイン池崎が引っ越したと言うので家に行ってみたら、思った以上に洒落たマンションだったので、メロンパンを食べて上の硬い部分をボロボロこぼしてきてやった。

題字イラスト:ヤマシタトモコ
写真:川瀬一絵
挿絵:岩井勇気
初出:TV Bros.2018年7月号

この連載について

でもあの子、俺じゃなくて主人公のこと好きなんだよな。

岩井勇気(ハライチ)

お笑いコンビ「ハライチ」として活動する岩井勇気さんが、大好きなアニメや漫画やゲームについて、妄想を膨らませながら綴るコラム。二次元に本気で心を奪われた者だけがたどり着くことのできる境地から、溢れんばかりの愛をお届けします。なお、コラム...もっと読む

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コメント

nkamasa タイトルのフレーズいいよね。 6日前 replyretweetfavorite

shinoburun @JOJI_HANABUSA 試し読みをどうぞ! https://t.co/uQp1YEpVKs 25日前 replyretweetfavorite

a_okum この人はスゴイ 29日前 replyretweetfavorite

kei_chan555 面白かったので 29日前 replyretweetfavorite