平野啓一郎
第6章アトランティック・クロッシング!|コラム②エレキギターの個性
今日、ありとあらゆる音楽で用いられているエレキギターのサウンドは、一切の教科書もなく、すべて、ブルースの時代以降のギタリストたちが、自力で生み出していったものであるーー。平野啓一郎が、小説を除いて、ここ十年間で最も書きたかった『「カッコいい」とは何か』。7月16日発売の新書を全編連載。 「カッコいい」を考えることは、「いかに生きるべきか」を考えることだ。(平日毎日更新)
コラム② エレキギターの個性
エレキギターは個性を表現する
エレキギターは、ジャズ・クラブよりも遥かに大きな会場でのコンサートを可能にした。その驚くべき動員力については本文でも紹介したが、ギターはとにかく、持っていること自体が「カッコよく」、人を惹きつけ、またそれほどまでに人を惹きつけるからこそ「カッコいい」という具合に、恐らく循環している。なぜなら、エレキギターは、まさに「しびれ」させてくれるからである。
オジー・オズボーンは、高校時代、一学年上で、後に一緒にブラック・サバスを結成するトニー・アイオミが、学校にギターを持って来た時のことをこう語っている。
「トニーはまばゆいばかりの赤いエレクトリック・ギターを持ってきたんだ。自分が生まれてこれまで見た中で最高にかっこいいものだ、と感じたのを覚えている。(13)」
更に、エレキギターは、楽器自体にDIY的な魅力があり、それが労働者階級の若者たちのメンタリティと合致していた。
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この連載について
平野啓一郎
『マチネの終わりに』『ある男』を発表してきた平野啓一郎が、小説を除いて、ここ十年間で最も書きたかった『「カッコいい」とは何か』。7月16日発売の新書を全編連載。 「カッコいい」を考えることは「いかに生きるべきか」を考えることだ。(平日...もっと読む
著者プロフィール
1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。小説家。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在。
著書に、小説『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)『ドーン』(ドゥマゴ文学賞受賞)『かたちだけの愛』『空白を満たしなさい』『透明な迷宮』『マチネの終わりに』(渡辺淳一文学賞受賞)『ある男』(読売文学賞受賞)、エッセイ・対談集に『私とは何か 「個人」から「分人」へ』『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』『考える葦』等がある。
webサイト:HIRANO KEIICHIRO official website
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