粋な飲みかた【パリッコ】

かっこいい酒飲み。ちょっと憧れますよね。「粋」という言葉が似あうようなそんな人。今回はパリッコさんによる「粋な飲み方」考です。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

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粋な飲みかたとは?

酒飲みならば誰しも「粋な飲みかた」に憧れるものですよね。ではそもそも、粋な飲みかたってどういうものだろう? 具体的に想像してみましょう。

時刻は午後5時。有名店というほどではない、街の気取らない老舗酒場。そこへ口開けの客として入っていく。大将に向かって指を1本立て「ひとりね」と伝え、カウンターのすみに座る。瓶ビールを注文し、おしぼりで軽く手を拭き、小さなグラスに注いだビールを一気に飲みほす。「ふぅ、うまいね」、などと小さくつぶやき、おもむろに本日のおすすめメニューを見上げる。「お、もう戻りガツオの季節か。いいね。それとお新香」。背筋にまっすぐと伸ばし、それらをゆっくりと堪能すると、「大将、うまかったよ、ごちそうさま」と店を出る。

もしくは午後3時。お昼の客がいったん引いてのんびりムード流れる、街の蕎麦屋。主人に向かって指を1本立て「ひとりね」と伝え、すみのテーブル席に座る。メニューを見もせず、「焼鳥、板わさ、酒」と注文。季節に関係なくぬる燗の日本酒を2合、ゆっくりと味わったら、もりそばを1枚さっとたぐって店を出る。

もしくは午後10時。出張でやってきた地方都市にあるオーセンティックバーの扉を躊躇なく開け、黙ってカウンターのすみに座る。マスターに「今日は暑かったからなぁ、まずはジンフィズにするか」と注文。美しい所作で目の前に差し出されたそれを、ゆっくりと一口飲み、「……お」などと小さくつぶやく。マスター、にやり。気分に合わせたカクテルをもう2杯飲んで店を出る。

〇〇すぎない

どうでしょう? どっからどう見たって粋じゃないです? こんな人いたら。では上記のシチュエーションから、「粋な酒飲みの条件」について考えていってみましょう。

まず、人数は絶対にひとりが望ましい。それから、基本的に動作がゆっくりしている。せかせかしてない。無駄なおしゃべりもしない。必ずすみっこのほうに座る。

加えて、

・食べすぎない
・飲みすぎない
・長居しすぎない
・酔っぱらいすぎない

なんてのも条件になってきそうです。そう考えてみると、粋な飲みかたって、「〇〇すぎない」が多すぎないですか? 飲めば飲むほど酔っぱらってだらしなくなるお酒のイメージとは対照的で、これじゃあまるで「酒道」。一体どれだけの人が極められるんだっていう、修羅の道のように思えてきます。

以前、横浜野毛の立ち飲み屋で午前中から飲んでいたら、隣にひとりのご老人がやってきました。その立ち居振る舞いに徹頭徹尾感動してしまったんですが、まず店員さんに一言「冷と奴ね」とだけ伝える。冷奴を注文したのではありません。冷酒と冷奴。それがお決まりの組み合わせなのでしょう。そして5分くらいでそれを平らげると、「お会計」と言って颯爽と帰っていかれました。か、かっこいい……。あの人なんか完全に、極め人の風格だったなぁ。

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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