「私は知っていました」と顔を出す
「コモディティ化している現在、アップデートを急げ!」みたいな話題に興味がある人はそもそもこの連載を読んでいないはずだが、こちらはこの数年、「この世の中は、井上公造化している」と言い続けてきた。SMAPの分裂が明らかになると、井上は「一般の方は驚かれたと思いますが、僕らは去年の夏からこの話は聞いていたので、驚いたというより、表面化したことに驚いた」(『おはよう朝日です』・ABCテレビ)と述べた。このようにして、何も知らない「一般人」に対し、言える情報と言えない情報が入り混じっている芸能界サイドから「私は知っていました」と顔を出すことで、「公=public」を「造る=create」役割を果たしてきた。
先方の意向通りに伝達する
私たちの多くは今、あれこれのツールで、特定の芸能人についての情報を真偽問わず収集できる。正直、表の顔すら知らないのに、裏の顔を語る記事を読みふけってしまうこともある。そうやって集めた情報の精度を確かめてから話し始めるのではなく、自分なりにpublicのイメージをcreateし、芸能界から流れてくる公式の情報をただただ素直に受け止めているだけではないんです、とのスタンスを見せつける。「いや、実はさ……」と切り出したいのだ。
その切り出しは、「パブリックイメージを素直に信じているわけではない自分」をプレゼンするために使われる。「一般の方は驚かれたと思いますが」という井上の言葉遣いを聞けば、まず、「では、アナタは一般ではなく何なのか」と思う。絶対的に、ジャーナリストではない。オフィシャルな存在に近づいていき、そこで小出しにしてもいい情報を定めてもらい、先方の意向通りに伝達する。批評は成立し得ない。ただただ、publicをcreateする。それが「一般の方」という言い方に象徴されている。
「芸能マスコミより一般人に注意!」
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