井上公造化する日本

今回取り上げるのは芸能リポーターの井上公造です。本連載では2回目の登場になります。武田砂鉄さんがここ数年提唱している「井上公造化」とはどういう現象を指すのでしょうか?

「私は知っていました」と顔を出す

「コモディティ化している現在、アップデートを急げ!」みたいな話題に興味がある人はそもそもこの連載を読んでいないはずだが、こちらはこの数年、「この世の中は、井上公造化している」と言い続けてきた。SMAPの分裂が明らかになると、井上は「一般の方は驚かれたと思いますが、僕らは去年の夏からこの話は聞いていたので、驚いたというより、表面化したことに驚いた」(『おはよう朝日です』・ABCテレビ)と述べた。このようにして、何も知らない「一般人」に対し、言える情報と言えない情報が入り混じっている芸能界サイドから「私は知っていました」と顔を出すことで、「公=public」を「造る=create」役割を果たしてきた。

先方の意向通りに伝達する

私たちの多くは今、あれこれのツールで、特定の芸能人についての情報を真偽問わず収集できる。正直、表の顔すら知らないのに、裏の顔を語る記事を読みふけってしまうこともある。そうやって集めた情報の精度を確かめてから話し始めるのではなく、自分なりにpublicのイメージをcreateし、芸能界から流れてくる公式の情報をただただ素直に受け止めているだけではないんです、とのスタンスを見せつける。「いや、実はさ……」と切り出したいのだ。

その切り出しは、「パブリックイメージを素直に信じているわけではない自分」をプレゼンするために使われる。「一般の方は驚かれたと思いますが」という井上の言葉遣いを聞けば、まず、「では、アナタは一般ではなく何なのか」と思う。絶対的に、ジャーナリストではない。オフィシャルな存在に近づいていき、そこで小出しにしてもいい情報を定めてもらい、先方の意向通りに伝達する。批評は成立し得ない。ただただ、publicをcreateする。それが「一般の方」という言い方に象徴されている。

「芸能マスコミより一般人に注意!」
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

「ここでしか書けない」 言葉の在庫を放出した。

往復書簡 無目的な思索の応答

又吉直樹,武田砂鉄
朝日出版社
2019-03-20

この連載について

初回を読む
ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

gensan_pknl @memo_gen @jh1cdv 2ヶ月前 replyretweetfavorite

die_kuma この「井上公造化」問題は、現代日本を表すとても重要な指摘だし、武田さんには本にまとめてほしいと本気で思っているよ。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

elba_isola |武田砂鉄 @takedasatetsu |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 public create略してパブクリ。 公造氏に喜ばれそうだ。ミヤネ屋ってそんな芸能人向けレクチャーまで。一般の方の誰得? https://t.co/ysUjUd3WV7 3ヶ月前 replyretweetfavorite