いい子育て」ってどういうこと?最短ルートは?正解は?教育ジャーナリストに聞いてみた

『こうしておれは父になる(のか)』(イースト・プレス)の刊行を記念し、『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方』(大和書房)、『ルポ教育虐待』(ディスカヴァー携書)など多数の著書のあるおおたとしまささんに、ジャーナリストとして、父親業の先輩として、教育にまつわる悩みを本人さんがあれこれ質問する特別記事をお届けします。

本人 子供が生まれて、最初はとにかく「死なせない」ことにだけ必死だったんですけど、だんだん育ってくると保活なんかもあって。自分はそこでようやく次のステージとして、「どう育つのがいいのか」というところに関心が移ってきました。おおたさんは今、ご自身ではどんな育て方をされていますか?

おおたとしまさ(以下、おおた) いま、子供は高校生と中学生ですから、もう手が離れちゃった感覚はしていますね。ひとりの人間としてほぼ完成しているといいますか。ときどきサポートしてやるだけで、あとは自分でなんとかするだろうと思います。なので現時点でいうのなら、特にやることはないのかなと。

本人 もうその境地に……!

おおた 僕には娘と息子がいるんですけど、その二人は僕と全く別のキャラクター。娘は、僕と性別も違うし、持っているものも違います。僕は僕の持っているものを活かしてこれまで生きてきたけど、お前らが持っているものをどう生かしていきていけばいいのかはさっぱりわかりません。「自分で考えて」って!(笑)

本人 それは、お子さんが生まれた当時からそういうお考えだったんでしょうか?

おおた いや、そんなことはないですよ。生まれたときはあーだ、こーだと考えることはありました。「本人の意思に任せたい」とか、「のびのび自由に生かせたい」とか。

本人 それ、いま自分が思っています。自由に育ってくれたらいいよって。

おおた でもそれって、教育虐待している親も絶対言うことです。「自由に生きるためには選択肢が必要。それには学歴が必要。だから勉強しなさい」というように。

本人 そこに陥る可能性もあるんですね……! あと、僕らは自分自身が成長していくなかでいろいろな失敗を経験してきましたから、「そういうルートには進まないうえで、のびのびさせたい」という話もしていました。

おおた そうですよね。でも、自分が通ってきた失敗を歩ませたくないって思った時点で、レールを敷いてしまうことになる。だから、子育てをしているうちに「同じ失敗をしてもいい」と思うようになるんです。これは親として、いつかそのときにならないと分からないことかもしれない。だけど、そうやって子供と向き合ううちに分かってくることだと思います。

子供に伝える3つのルール

おおた ただし、どんなキャラクターを持つ子供であれ、普遍的な意味で、僕がわが子に伝えたいと思うことが3つあります。1つは「正直に生きろ」。自分にウソをつくなということ。

本人 それは、行動にウソをつかないということですか?

おおた 自分をごまかすことをしないということですね。正直に生きていたら、絶対に誰かとぶつかる。そしたらその分、回り道をしないといけない。本当は、ウソをついた方がそのときだけは最短距離なんです。だけど、一度自分をごまかすと、ずっとごまかし続けないといけなくなる。するとどんどん自分の人生が自分の人生でなくなっていく。遠回りしていても、結局は目指した方に進めるなら、ウソをつかない方がいいって思うんです。

本人 なるほど、遠回りしても正直に。

おおた 2つ目は、卑怯なことをするなということ。パワハラとか、いじめとか、そんな卑怯なことをするなと。正直に生きて、自分の好きなように生きればいいけども、自分の立場を利用した卑怯なことをするなと。そして3つ目は、「君は自由だ」ということ。

本人 その自由というのは、どういうことでしょうか? 「のびのびやれ」とはまた違うものでしょうか。

おおた 「自分がどんな視点で世の中をみるのかは君次第なんだよ」ということです。「あれしていいこれしていい」みたいなニュアンスとはちょっと違っていて、世の中の常識とか価値観から独立した存在に自分もなりえるということ。1つ目の「正直に」と近い部分もありますが、これは精神的な自由なんです。

本人 「これがスタンダード」とは特に定義しない……ということですかね。育児の中で「教科書どおりでなくてもいいんだな」と後々になって思わされたことは何度かありましたが。

おおた 子育ての試行錯誤とは、そういう視点に立てるかどうかが大事なのかなとも思います。今まで見ていたものが、ある瞬間にすごい輝いて見える体験こそが幸せというか。視点が変わった瞬間、子供たちの輝きに気づけるようになる。

本人 その3つの方針は言葉にして伝えていましたか?

おおた この3つが言葉になったのは最近の話ですね。今は抽象的な言葉で伝えられるようになったので、特に上の子には伝えました。それでも、やっぱり言葉で言ってもわかんないですよね。

—小さい子に伝えたいときは、どういった形で伝えるべきでしょうか?

おおた 親がそうやって生きることです。態度で示す。

本人 「態度で示す」というのは、シュタイナーも同じようなことを言っていましたね。『世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方』を読んで、「子供を尊重する」というのはどの教育法にも共通しているなと思いました。自由を許容するといいますか。

おおた 僕が言った「自由」はシュタイナー的な要素も含まれていて。人間は自由であり、それぞれの個性がある。型にはめていくのではなく、子供を中心に見るというのが、世界7大教育法には共通しているはずなんですね。だって、アフリカの人たちもネットは繋げられるでしょうけど、おそらくマサイ族は子育て情報なんて検索していませんよ。もっとね、株価とかチェックしてる(笑)

一同笑

おおた だけど、ちゃんと育ててる。それが何千年も続いている。子供をみていれば、その子が発してるメッセージもわかるはずなんですよ。それを、子供の外に答えを求めだして「これ正解っぽいわ」とか、「この行為をやってこう」となった瞬間、目の前の子供のことが見えなくなります。

本人 押し付けない、ということですね。大変なこともあるとは思うんですけど、オリジナルな道というか、特定の教育法やルールというよりかは、さまざまな物事をいいとこ取りしながら育っていくルートを歩みたいなって自分は思いますね。だから、こういう進歩的な教育の中でのびのびと突き抜けてもらうのもいいのかなと。いやでも、普通じゃないってことはリスクがあるし……っていうのが今の気持ちです。

おおた まあ、どっちの道を選んでも同じくらい大変ってことですよね。

—『世界7大教育法』を読んだ読者からの反応の中にも、「魅力的だけど、実践できるかどうかというと難しそう」という声はありましたね。

おおた 疑問に思っているんだったら、やらない方がいいです。

本人 だから、さっきおっしゃっていた「子供をちゃんと見る」というのが、一番間違えないというか、正しい在り方だと思いました。少なくとも現状はガン見するということだけはきちんとするようにしています。

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「今にこの子は「パパ」としゃべるだろう。そのとき自分は、何としてきみを抱きしめたらよいか、再び考えてみよう」――ライブやフェスをレポートするのが趣味のネットユーザー、本人さん(@biftech)がはじめての子育てを実況! 父親目線で見...もっと読む

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コメント

b75s おおたとしまささん https://t.co/Mn03ZCROxI 26日前 replyretweetfavorite

Singulith 「成功した人生」とはどんなものか?  >「子育ての成功って何だと思います?    ~本人 自分の人生を振り返ったとき、いろいろあったけど今すごくやれているなって思えることですかね」 https://t.co/ulNW7cy7Cy 27日前 replyretweetfavorite

tomo_murasawa ガワは俺によく似て、中身は妻によく似た我が子4歳、これからどうなることやらー。 27日前 replyretweetfavorite

mori_kananan |本人 @biftech |こうしておれは父になる(のか) 好きな連載だったから読めて嬉しい! 世界7大教育法、学んでみよう… https://t.co/a77XjTB6oK 27日前 replyretweetfavorite