卵の量を控えるだけでお店風の天ぷらに! 〜揚げ物のキホン

調理法別、食材別に「料理のキホン」を伝える連載。第4回は「揚げ物」についてです。カリカリなポテトや、サクサクなトンカツ。お店のあの食感を、家でも味わいたいですよね。美味しい揚げ物の肝はなんなのか、お伝えします。

揚げ物は難しい、と思われている方は多いのではないでしょうか? でも、実は揚げるという調理法は焼くよりも簡単です。フライパンの温度を調節するにはコツが必要ですが、揚げ物はたっぷりの油さえ使えば比較的簡単に温度を安定させることができるからです(家庭ではたっぷりの油を使う勇気はなかなか出ないのですが)。

揚げる料理のメリットは簡単なだけではありません。昔、お盆などの人が集まる場面では野菜の天ぷら(精進揚げ)が定番でした。揚げ物は一度にたくさんの量を短時間で調理できるからです。食材を油に沈めると、全体から均一に加熱されるため、加熱効率が非常にいいのです。

『揚げる』は油の中で食材を加熱する調理法。油の中で加熱すると水分が抜けていき、そこに油が入り込み、さらに水分が抜けていきます。これを調理科学の世界では油と水分の交換と表現します。
つまり、揚げる料理の本質は水分を抜くこと。この部分さえ理解できれば揚げ物は攻略できます。脱水することでカリッとした食感を出すのですから、水気の多い食材は揚げ物に向いてないことがわかりますし、油に入れる前や衣をつける前に素材の表面の水気を除去しておくことも大事。

衣をつけずに、そのまま揚げる調理法が〈素揚げ〉です。素揚げの代表、ポテトチップスを手づくりしてみましょう。スライサーがなかった時代は家庭でつくることが難しい料理でしたが、今では手軽に挑戦できます。ポテトチップスは油で揚げることでジャガイモの水分を5%以下にしたもの。揚げるという調理の本質を理解するのにぴったりです。


揚げる調理の本質は脱水 ポテトチップス

1.ジャガイモは皮が付いたままスライサーで薄切りにした後、水でよく洗い、水気をしっかりとふきとる。

2.170℃に熱した油に少しずつ入れていく。火加減は弱火。きつね色に色づき、カリッとしたものから順番にとりだし、キッチンペーパーで油を切る。

3.塩を軽く振ればできあがり。


ジャガイモを水にさらすのは、ジャガイモに含まれる糖分(ブドウ糖や麦芽糖)を洗い流すため
です。糖分を除去することで、揚げ色も軽くなりますし、水分と結びつく性質のある糖分をとりのぞくことで脱水がうまく進みます。

揚げる前にジャガイモの水気をキッチンペーパーかタオルで、しっかりとふきとることも大事です。そのまま揚げると表面の水が蒸発するときに周囲の熱を奪っていくので(=気化熱)均一に揚がりません。

170℃という温度にも根拠があります。180℃以上だとメイラード反応が急速に進んでしまい、脱水する前に焦げてしまいます。しかし、温度が低すぎると水分が蒸発しません。したがって160℃〜170℃くらいがポテトチップスを揚げる適温ということになります。

170℃に温めた油にジャガイモを投入すれば、160℃くらいまで温度が下がるので、そこからは火加減を調節して温度を維持しながらじっくりと揚げていきましょう。強火で油の温度を上げたら、あとは弱火で揚げていくのが基本です。

ジャガイモを入れると、泡が立つのがわかると思います。これはジャガイモから水分が蒸発している証拠。たくさん入れるとこの蒸気が邪魔して上手に揚がらないので、油に投入するときは重ならない程度に加減してください。

しばらくすると泡が小さくなってきます。ジャガイモの水分が抜け、カリッとしたらとり出します。時間がかかると思いますが、気長に少しずつ揚げていきましょう。

自家製のポテトチップスはジャガイモの風味が魅力。いつも食べている市販品とは一味も二味も違うはずです。


二度揚げすることでカリッとした食感に フライドポテト

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おいしさの「仕組み」がわかる 料理のキホン

樋口直哉

すでに料理をしている人も、これからはじめる人も、知ればみるみる料理が上達し、楽しくなる「料理のキホン」をご紹介します。どのように調理するとおいしくつくれるのか、なぜそのように調理するのか、食材はどのように扱うべきなのか、調理法と食材の...もっと読む

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naoya_foodlab 基本解説シリーズ。揚げ物は〈水分と油の交換〉というメカニズムを理解すると一気に揚げ物上手になる……はず。 〜揚げ物のキホン|樋口直哉 @naoya_foodlab | 22日前 replyretweetfavorite