夏野菜の煮物はレンチンでおいしく簡単に作れる!〜蒸し料理のキホン

調理法別、食材別に「料理のキホン」を伝える連載。第3回は「蒸し料理」についてです。”蒸す”と言うと難易度の高い調理法に思われがちですが、実は普段の料理でも何気なく使われており、蒸す技法を覚えることで料理の幅は確実に広がります。

前章で紹介した鶏の照り焼きは、皮目を高温で香ばしく焼き、身側は水分を媒介させてやや低温で調理しました。これは言ってみれば『焼く』+『蒸す』の合わせ技。蒸し料理はなんとなくハードルが高い印象がありますが、じつは様々な場面で使われています。

蒸し器・セイロがなくても、蒸すこと自体は手近にある道具で可能です。例えば野菜のフライパン蒸しは簡単にできて、おいしい野菜料理。必要な道具はフライパンにぴったりとはまる蓋だけです。


蒸し料理の特長〜野菜のフライパン蒸し〜

1.ズッキーニ1本を1㎝の厚さの輪切りにし、小カブ2個は6〜8つのくし切りにする。ラディッシュ4個は半分に、サラダ菜1株は四等分に切る。すべての野菜とベーコン4枚、水50㏄とオリーブオイル大さじ2をフライパンに入れ、蓋をする。

2.強火にかけて1分程で中に蒸気が充満してきたら弱火にし、5分〜7分蒸す。

3.蓋をとり、塩小さじ1/4(1.5g)、コショウで味をつける。好みでレモンをしぼる。


でき上がりの目安はサラダ菜にはしっかりと火が通り、他の野菜にはシャキシャキ感が残った温かいサラダ、という状態です。
このとき、鍋の中ではなにが起きているのでしょうか。
鍋底で熱せられた水は水蒸気となって鍋の中を対流します。水蒸気の密度は水と比べると小さいですが、加熱効率は悪くありません。それは茹でるのとは異なる加熱のメカニズムが働いているから。

原理はこうです。食材を蒸すと水蒸気が食材に触れます。水蒸気は食材によって冷やされ、水滴に変わり、このとき、食品に熱が伝わります。これを潜熱といいます。食材の表面に付着した水分は下に落ち、その水分が再び水蒸気となって食材に熱を与え続けます。

水蒸気が対流しているだけなので食材は動きません。そのため形が崩れないので、焼売などもそのままの形で蒸し上げることができます。食材の量が多くても、全体を均一に加熱することができます。また、蒸し器の中は湿度があるので、食材の表面が乾いてしまうこともありません
水を媒介とした加熱なので、温度は100℃までしか上がりません。したがって焦げ目はつきませんが、逆にいえば焦げる心配がない、ということ。つまり『蒸す』は「焼く」や「揚げる」と比べると、大らかな調理法といえます。
茹でるのと違って、食材の成分が水に溶けづらいのも特徴。穏やかに蒸し上げると、素材を傷つけることなく、味をそのまま残すことができるのです。逆にいうとアクや臭みなども残ってしまうので、蒸す料理にはアクの少ない食材が向いています。

デメリットは蒸し器に入れている最中は蓋を開けると水蒸気が逃げてしまうので、途中で味付けすることができないこと。そのため、普通は最初に味付けを済ませておくか、最後に味付けをします。

蒸すときは火傷にも注意してください。蒸気は機関車や船も動かすほどのエネルギーを持っています。同じ重さなら熱湯よりも熱エネルギーが大きいので、蒸気に触れるとひどい火傷になることも。蒸し器の蓋を開ける時などはとくに注意が必要です。

これは余談ですが『蒸すと肉の脂が落ちてヘルシー』ということを聞いたことはありませんか? しかし、蒸すのと茹でるのとでは脂が落ちる量はほとんど変わりなく、むしろ焼いたほうが脂は落ちます。さきほど説明したとおり、蒸す料理は100℃以下での加熱です。一方の焼く料理は140℃以上の加熱。脂は温度が高いほど液体に近づき、流れ落ちるので、焼く料理のほうが脂は落ちる、というわけ。

蒸す料理のメリットは脂を落とすことではなく、焼く料理のような焦げ目をつけずに、茹でる料理のように水気を含ませないで調理できること。例えば野菜は茹でるよりも蒸したほうが余分な水気を吸わないので、たくさん食べられます。


「蒸す」をほかの調理法との組み合わせる

「蒸す」は組み合わせて使われることも多い調理法です。
第2章
で紹介した鶏の照り焼きは、餃子と同じ『焼く』+『蒸す』の組み合わせですし、餃子を焼く時はテフロン加工のフライパンに餃子を並べ、お湯を注ぎます(餃子を焼くときは水ではなく、お湯を注いでください。餃子の皮は小麦粉でできているので、水を注ぐと溶けてしまい歯ごたえがなくなってしまうからです)。蓋をして、中火にかけると、次第に蓋の隙間から湯気が出てくるはずです。この段階の餃子は蒸された状態。そのまま加熱をしていき、水分がなくなったら、蓋を開け、油をたらし、加熱を続けます。こんな風に餃子は蒸した後に焼くことで、上側はやわらかく、底はパリッとするのです。


電子レンジで蒸し料理はつくれるか?
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おいしさの「仕組み」がわかる 料理のキホン

樋口直哉

すでに料理をしている人も、これからはじめる人も、知ればみるみる料理が上達し、楽しくなる「料理のキホン」をご紹介します。どのように調理するとおいしくつくれるのか、なぜそのように調理するのか、食材はどのように扱うべきなのか、調理法と食材の...もっと読む

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naoya_foodlab 蒸す調理ってロマンがありますよね。アジア圏の調理法と言われるけれどもちろん原理的には世界中で応用されている。蒸し料理のキホン|樋口直哉 @naoya_foodlab | 29日前 replyretweetfavorite