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こんにちは、きのコです。
今年のお盆休みはどんなふうに過ごしましたか?
NetflixやAmazonプライム ビデオで映画を観まくったという人も多いかもしれませんね。かくいう私も、Aさんとおうち映画デートを楽しみました。今回は、その中のひとつ「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」という映画についてお伝えしたいと思います。
劇中に”ポリアモリー”という単語は出てこないけれど
「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」は、心理学者 ウィリアム・モールトン・マーストン教授と、妻のエリザベス、そして夫婦の助手 オリーブ・バーンの3人が送っていた共同生活を映画化した、実話に基づいた物語です。劇中に”ポリアモリー”という単語こそ出てこないものの、ポリアモリーが重要なテーマのひとつになっている作品だと思います。
ウィリアムは嘘発見器の発明者であると同時に、今日では企業の人事やチームワークの参考にされている「DiSC理論」の提唱者でもあり、フェミニズムにも関心をもっていました。共同生活の中でエリザベスとオリーブに触発された彼は、1941年「ワンダー ウーマン」というアメコミのヒロインを生み出します。
嘘発見器のデザインは、ワンダー ウーマンが使う道具「真実の投げ縄」に似ています。投げ縄に絡めとられた者たちは、嘘がつけなくなり、何でも白状してしまうのです。
エリザベスが嘘発見器でウィリアムに”核心に触れる質問”をするシーンから、物語は大きく動き出します。
嘘発見器を着けた夫に対して、「妻を愛してる?」という質問に続けて、「オリーブを愛してる?」と尋ねるエリザベス。ウィリアムの本心を確かめた後で、彼女はさらに問いかけます。
「オリーブのどこに惹かれるの?」
「美しい。無邪気で優しく純真だ。君は頭脳明晰で気性が激しくユーモアがある。おまけに一流の悪女だ。2人を足せば完璧になる」
惹かれたのは、2人がまったく違うからこそ
ウィリアムの気持ち、私にはとてもよく分かります。ポリアモリーにもいろいろな人がいて、恋人たちが全員似たタイプ、という人もいますが、エリザベスとオリーブは火と水のように真逆。私のパートナーであるAさんとIさんもかなり違うタイプだし、Iさんのパートナーである私とJちゃんも異なるタイプです。
エリザベスとオリーブは、片方が片方の”予備”というわけではなく、2人がまったく違うからこそ、ウィリアムは両方に惹かれたのだと思います。
やがて、3人はお互いに愛し合うようになり、オリーブが妊娠したのを期に共同生活を始めます。
ウィリアムのエリザベスに対する「君の子でもある」という言葉、オリーブの「家族で育てたい」という言葉が印象的です。そして、エリザベスの「子供が変な目で見られないようにうまい説明を考えなきゃ。ウソをつくの。この先ずっと」という言葉も。
エリザベスはいちばん破天荒に見えるにも関わらず、実は劇中、ずっと”世間体”を気にし続けているのです。
3人での交際を始める時も、3人で暮らして子供を育てる時も、ボンデージや緊縛の世界に踏み込む時も、ワンダー ウーマンのアイディアが生まれた時も、「世間が許さない」「うまくいくはずない」とブレーキをかけるのはいつもエリザベスで、「それでもやってみたい」とアクセルを踏むのはいつもオリーブです。そして最後にはエリザベスも、オリーブに導かれて新しい世界へと踏み出してゆく。
オリーブは一見、優しく純真な”服従タイプ”でありながら、実際のところは3人の関係を力強く後押しする存在なのです。
もし自分の命が尽きてゆくことを知ったら
しかしそんな関係も、彼らの子供が親のことを理由にイジメを受けたことで崩壊します。
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