前回はマレーシアでもっとも嫌われるマナーは、ウエイターやウエイトレスに威張ること、と言うお話をしました。その背景には、社会は持ちつ持たれつ、お互い様で、なおかつ他人に期待しすぎないと言う精神性があるようです。
今日は実際にマレーシアでの「お互い様」がどんな感じか、ちょっと例を出して紹介します。
二重駐車に怒らない理由とは
マレーシアでは二重駐車が当たり前です。
ホテルで私の車の前に別の車が横付けに駐車してあり、出られないことがありました。困って警備室に相談したら、側で聞いていた男性がニコニコしながら、「多分、サイドブレーキが外して止めてあるから、押して出ればいいんだよ」と教えてくれたのです。
やってみたら、本当にサイドブレーキがかけてなくて、私の力でもその車を手動で動かすことができ、無事、駐車場から出られました。そうか、押して動かせばよかったのか。新興国らしい知恵だなぁ、と思ったのです。
別の日のこと。街に駐車して戻ってきたら、隣に大きなトラックがピッタリ止めてあるのです。ギリギリすぎて、私の車が出られません。何度かやってみるのですが、擦ってしまいそう。そのうち、トラックの運転手が戻ってきて、「ソーリーソーリー。出にくいだろ。悪いけど、ここに止めないと搬入できないんだ。運転代わってあげようか。俺なら出られると思う」と私の車を代わりに運転してくれたのです。上手に出てくれて、サンキューといって別れました。
こんな風に、助けてもらえる回数が、東京にいるときより増えました。
私も、日本にいた時はもう少し他人を警戒していたと思うのです。
知らない人をいきなり信頼して大丈夫?と心配されそうですが、マレーシアにいると、ゆるくテキトーになっていく。そして、他人に任せられる、いつも頼れる(騙されたり、失敗するかもしれないけど)、怒ったらだめ、という思考回路ができてしまったようです。
日本では成立しない「テキトーなサービス」
日本からマレーシアやフィリピンなどの東南アジアに戻って来て感激するのが、ケータイ屋さんです。
特に便利なのが、街にある1畳くらいの小さいショップ。どこも暇そうで、携帯電話の取り扱いに慣れている印象で、ちょっとした故障ならさっさと裏蓋を開けて作業してくれます。携帯の保護フィルムを買えば、こちらもさっさとつけてくれます。
日本のように「お客様、お手数でございますが……」などと丁寧では全くありません。
まるで昔からの友達のように対応はラフなのですが、信頼して任せてしまえば、割と快適にお付き合いできます。
うまく動かなければ、「なんか動かないです」って持っていけば、「どれどれ」と見てくれるのです。ただし、一方で「バックアップは取ってますか?」などと確認してくれることもありませんし、壊してしまう可能性もあるわけです。
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