虐待」を繰り返すのか、反面教師にするのか【第21回】

心的外傷(トラウマ)をどう乗り越えるか──。例えば親から受けた虐待を自らも子どもにしてしまうのか、反面教師にできるのか。その分かれ道は育ち方にあるとされます。不幸にして幼少期に愛着形成ができなかった場合、人はそれでもやり直せるのでしょうか。茂木憲一郎さんは「脳の可塑性」に希望を見出します。
臨床心理学者・長谷川博一さんとの共著『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

子育ての最大の目的は 親の影響が0に近づくこと?

長谷川 文化にしろ、虐待や犯罪につながる可能性のある攻撃性にしろ、親の世代から子の世代へと引き継がれていくことがあります。その程度が、大きい人もいれば小さい人もいる。つまり、世代間連鎖が起きている人もいれば、そうではない人もいます。その現象は脳から説明できますか?

茂木 おそらく心的外傷(トラウマ)に対して、それをどう乗り越えるかという戦略の中に、自分が受けたことを繰り返してしまうという脳の働きもあるし、それを反面教師として逆方向に行く脳の働きもあります。

長谷川 その脳の働きは、必ずしも意識で制御できるものではありませんよね。

茂木 むしろ無意識のほうでしょうね。虐待もある意味、一つの文化じゃないですか。もちろんこれは悪しき文化だけど、その虐待文化に接触していない人よりも接触してる人のほうが、それについて学習をする機会があるわけです。

 要するに、世の中にそういうものが存在すると思っていない人もいるし、その存在を自分の身をもって学習している人もいる。そうすると学習してしまった人にとっては脳の中にそういう回路がすでにあるわけだから、それを繰り返す確率がより高くなりますよね。

 ただ一方で、人間は、自分の経験からこれは良くないことだから、いわゆる反面教師ということでそこから離れることもできる。

長谷川 そこで、反面教師にできる人とできない人とに分かれますよね。

茂木 それはなぜ決まるかは、ジュディス・ハリス(※74)のネットワーク理論にあります。ある人の人格は、その人と接する人との社会的な関係性の総体、ソーシャルグループで決まるという考え方です。

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コメント

night_gf 子育ての最… https://t.co/qnISPbHhxL 3ヶ月前 replyretweetfavorite

megamurara 脳の可塑性に希望を感じました。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

tadatada0 『うまく育った… https://t.co/hAHSLNLuBq 3ヶ月前 replyretweetfavorite

muni83403165 『うまく育った子どもというのは、親の影響が統計的に0%まで落ちる』……!!  3ヶ月前 replyretweetfavorite