自分が働くまで「人の手まで借りて働く?」ということへの偏見は私にもありました。障害者の私でさえこうなんだから、あーあ。言い訳に聞こえるかもしれないが、世の中だって障害者が介護者を付けて働くってまだ想像の彼方なんじゃないのかなー。
車いすに乗り、決まった曜日にエレベーターに乗ると声がかかる。 職場の近くには大きな病院がある。どうやらこの御婦人は、そのことだけが記憶に残っているらしかった。「働きに行きます」と何度か話しているのに「○○病院もこの時間なら空いている? あそこの耳鼻科っていいの?」って幾度となく聞かれた。 白髪のご老人は 「お勤め?(夫さんを見送ってから)随分経つでしょ、朝から感心だ。で、お宅は何派?」と問う。 とっさに「あっはい?(あっそっちのお勤めかと思い)うちはおにしさんです(西本願寺派)」と応える。「そうですかー。うちはお東さん(東本願寺派)です。気をつけて」と手を振られる。嘘をついたわけではないのに、なんだか仕事に行くのに少し後めたい気持ちになる。 そりゃー私は病院通いもお寺さんとのお付き合いも欠かせない身だ。でも、これでも働いてんの!今日は勤務日!! 善意ある顔見知りさんとの朝の会話は、少々ずれはあるが楽しめる。きっと彼らは真相を知れば、驚き感心し「いろいろあるだろうけれど、がんばって」と仰ってくれるだろう。気を取り直して介護者と駅に向かう。
「えっ一人で通勤ができないのになぜ働きに行くの?」「通勤や職場で介護をお願いして? そうまでして働かなくても…」という顔なき声に私は言いたい。
「なんで障害者が介護付けて働いたらあかんの」「障害者はなんの役にも立たないってなに決めてんの」「障害者が人の手を借りて働く辛さ、あんた知ってんの?」
うわっヒートしすぎた。が、そもそも経済活動しなきゃ生きていけない社会じゃん。そこから障害者だけが外され続けるのはおかしいと思う。
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