景行天皇の八十人の皇子、皇女
四年二月十一日、天皇は美濃に御幸(みゆき)しました。側近の者が、
「この国にオトヒメ(弟媛)という美人がおります。容姿が整って美しく、ヤサカノイリビコ(八坂入彦皇子)の娘です」
と申し上げました。天皇は、妃にしようとオトヒメの家を訪ねました。オトヒメは天皇が御幸されると聞くと、すぐに竹林に隠れました。そこで天皇はオトヒメを竹林から出そうとして、泳宮(くくりのみや)※1に行き、鯉を池に放して朝夕ご覧になって遊びました。
オトヒメは、その鯉の遊ぶのを見たいと思うようになり、密かにやって来て池を見ていました。天皇はすぐさま姫を引き留めてお召しになりました。
オトヒメは、夫婦の道は昔も今も変わらないけれど、自分にとっては不安なことだと思い、天皇に願い出ました。
「私は夫婦の交わりを望まない性格です。今は天皇の恐れ多い仰せでしばし寝殿に召されておりますが、心の中では喜ぶことができずにおります。
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