コンピューターがプロの棋士に勝ったり、話し掛けるだけでさまざまな自動操作ができる「スマートスピーカー」の登場などにより、AI(人工知能)は、あれよあれよという間に知られるようになった。現在のAI開発は、「第3次ブーム」といわれている。
そのキーワードは、「ディープラーニング(深層学習)」だ。学習能力をコンピューターに獲得させるための手法や技法を総称して機械学習と呼ぶが、ディープラーニングもその手法の一つで、人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」を使って大量のデータから学習する。脳が何層ものネットワークで情報を処理するので「深層」と呼ばれる。
従来は、人間がデータ処理などの判断ルールを教え、たくさんの処理を経験させることで解析や判断の精度を上げていた。しかしディープラーニングではAI自身が、大量のデータから自らルールを学び、精度を上げていく。
背景には、学習に活用できるデータが急増したことや、その高速処理ができる演算装置(例えばGPU=グラフィックス・プロセッシング・ユニット)といったコンピューターリソースの高度化、ディープラーニングのアルゴリズム(計算方法)の開発などがある。
「第3次AIブームには、二つのAIがあることを知っておくべきだ。“大人のAI”と“子供のAI”の存在で、それぞれの活用分野も異なっている」と、野村総合研究所の長谷佳明上席研究員は解説する。
人間には困難だが機械にとっては簡単なこと、例えば大量のデータの処理などに人間の専門的な知識を活用することで、人間にはできない付加価値の高い作業を行わせるのが「大人のAI」だ。売り上げ予測や故障予測、顧客分析などデータ分析や将来予測の分野で利用されている。
一方、子供が成長に合わせて言語を身に付けたり物事を的確に判別できるようになる知的な活動が「子供のAI」だ。これにより人間にしかできないと考えられてきた作業が実現する。例えば囲碁でチャンピオンに勝つ、車を自動運転する、ロボットが室内の地図情報をつくりながら掃除をするなどなど。
日常の生活でAIの高度化を実感するのは子供のAIの方だろう。
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