効率優先の社会に科学を押し込んではならない

【インタビュー】
ノーベル賞学者かく語りき③
大隅良典(2016年 ノーベル生理学・医学賞受賞)

●東京工業大学 科学技術創成研究院栄誉教授
おおすみ・よしのり/1945年生まれ。細胞の自食作用の仕組みを解明。

──「日本からは、もはやノーベル賞受賞者は出ない」という意見をどう思われますか。

 現状を放置すれば、日本の基礎科学は徹底的に駄目になるでしょう。さまざまな領域で世界レベルに対応できず、その穴を埋めるには何十年もかかる。しかし国の危機意識は非常に乏しいと感じています。

──博士号取得者も減っています。

 博士号の取得者が減っているのは世界的な傾向ですが、日本では顕著に出ています。理由は二つあるように思います。まず職業としての大学の先生が魅力的ではなくなった。給与面での見返りは少ないし、ポストドクター以降の進路も減っており、モチベーションが上がらない。優秀な研究者ほど修士を得ると企業に就職してしまう。少子化で、母親からは「(研究者みたいな)やくざな仕事に就くな」と言われる始末です。

 科学研究に対する社会的なリスペクト(尊敬の念)がなくなってもいます。それは「科学は役立つものでなくてはならない」というあしき誤解とつながっている。社会が音楽や絵画などの芸術を不可欠な文化として必要とするように、科学研究もまた文化であるとの認識がありません。

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週刊ダイヤモンド 2018年12/8号 [雑誌]

ダイヤモンド社
ダイヤモンド社; 週刊版
2018-12-03

この連載について

初回を読む
日本人はもうノーベル賞を獲れない

週刊ダイヤモンド

21世紀に入ってからというもの、米国に次ぐ数のノーベル賞受賞者を輩出している日本だが、実は科学技術立国の足元は驚くほど揺らいでいる。近年の科学技術政策の実態を知る関係者ほど、「このままではもうノーベル賞など期待できない」と嘆く。どうい...もっと読む

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