私の頭の中の温度計は沸点附近

病院の待合室で待っている渋沢とユウカ。ユウカがトイレに立つと渋沢もついてきた。


ずっと何かがおかしいと思ってた。

渋沢の「あんなこと」を目撃してから、ずっと頭の中に変な虫が住み着いて、それが時折顔を出す。
今までの自分では、ありえないようなことを平気でやるようになっていた。

自分が悪いんじゃない、渋沢が悪いんだ、と言っても彼は無理やり命令してやらせるわけじゃない。
明らかに私から、挑発するような時もある。

頭の中のフィルターに、渋沢が入り込んでいるのはわかっている。
だから、私は普段ではありえないようなことをするようになっているのもわかっている。

でも、どうしたらいいかわからない。
渋沢と一緒にいると、それが普通になってきているのだ。

付き合う男によって、がらりと変わる女がいるのは知っている。
私はそういう女じゃないと思っていた。しっかりとした自分があって、男とも対等にわたりあえて、自分の主義主張ができる。

でも、そんな浅はかな主義主張なんて、渋沢の前では意味がない、とわかっている。
ハッキリとした自分なんて私は持ってなかったんだ、とある意味、諦めにも似た感情がわきあがる。

今日、いま、渋沢がトイレについてきてやろうとしていることを、私は受け入れてしまうかもしれない。
沸騰しそうな頭の横で、かろうじて残った冷静な私はそんなことを考えていた。

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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