もっとも、基金自体の規模は数千万円にとどまるものではない。本庶氏の構想では「数百億~1000億円規模」とのこと。この金額が意味するものは、本庶氏の持つ「日本の基礎研究分野に対する危機感」にほかならない。
というのも、本庶氏はかつて本誌のインタビュー(→「ライフサイエンスは息が長い 基礎研究に種をまき、肥やしを」)で、日本の基礎研究の状況について「かなり瀬戸際だと思います。私たちの世代、次の世代までは何とかやってこられました。今の40代以下は大変つらい思いをしています」と答えている。未来への種まきが不可欠というわけだ。
近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。だが、それは1980~90年代までの研究環境による成果であって、その後の日本の科学技術政策を鑑みると、これから先はとても期待が持てない──。そう訴える研究者は多い。