トランスフォーミング【達成期】
さあ、ついに第4ステージ「トランスフォーミング」です。
「達成期」の言葉が意味するように、チームで「大きな成功体験を共有する」ことで「トランスフォーミング」へと成長したチームは、まさに「無敵」の状態。
周りから見るとすごいことを成し遂げているように見えますが、本人たちは「これ、普通でしょ?」という感覚で、自然な雰囲気で大きな成果をあげられるチームワークを発揮できるまでになっています。
「トランスフォーミング」のチームには次のような特徴があります。
・メンバーが、あうんの呼吸で動けるようになる。
・メンバーのエネルギーは、共通のゴールと目的の実現に向けられる。
・ほかのメンバーへの貢献につながる行動(アシスト)が当たり前になる。
・自分がやるべきことをやり切ることが、チームへの貢献につながっている実感がある。
・目的やビジョンを共有し、チームとしての能力が発揮され大きな成果が生まれる。
・目的やミッションを実現することで、大きな成功体験を共有している。
・「このチームだったら何が起きても大丈夫」という、強い信頼関係が生まれる。
・「ずっとこのチームでやりたい」といった、チームに対する帰属意識が高まる。
「大きな成功体験」とは、第3ステージの「ノーミング」の段階で生まれた自分たちで設定した目標のこと。チームのミッション達成に関わる成果、チームのミッションそのものを指している場合もあります。
「ノーミング」で起きていた小さな成功体験は、チームのメンバー内でしかわからないようなものでも成長の糧になりましたが、「トランスフォーミング」で求められている成功体験は、「偉業」という言葉で表現できるような「誰が見ても大きな成果とわかる」規模なのです。
『宇宙兄弟』の「ジョーカーズ」で言えば、月面ミッションをすべて完遂し、メンバー全員が無事に地球へと帰還したときでしょうか。
「せっかく無敵のチームになったんだから、トランスフォーミングって長く続くんじゃないの?」
そう思われる人も、いるかもしれません。
僕は、チームが「トランスフォーミング」でいられる期間は、そう長くないと思っています。
なぜ「トランスフォーミング」は解散へと向かうのか
2017年、僕がファシリテーターとして関わっているレースラフティング女子日本代表チームは、世界大会を戦っていました。
最終種目を制し、世界一になることが決まった瞬間に、チームは「トランスフォーミング」の状態を迎えました。
しかし、大会はそこで終了。
僕も世界一の喜びを全身で味わいましたが、その時間は5分程度。
この大会で引退を決めていた選手もいたので、すぐに「次の大会に向かって何をするか」という気持ちに切り替わりました。
「トランスフォーミング」に突入したその瞬間からチームはすでに、「解散」に向かい始めます。
「世界一になる」という偉業を達成したチームの「トランスフォーミング」は半日で終わる、という体験をしたのです。
「ジョーカーズ」も、地球に帰還したのち、報告や検査、取材といったミッションは残っているでしょうが、月でのミッションが完了した瞬間に、チームは解散に向かい始めます。
これほどの素晴らしいチームワークを誇るメンバーならば、また同じチームで新しいプロジェクトに挑めばよいと、普通は考えるでしょう。
メンバー自身に「ずっとこのチームでやりたい」という思いがあればなおさらです。
お互いのことを知り尽くしているのだから、「フォーミング」や「ストーミング」で経験したコミュニケーションの壁に立ち向かうこともありませんしね。
しかし、いくら素晴らしいチームワークを発揮したメンバーでも、ミッションやプロジェクトが変われば必ずしもうまくいくとは限りません。
「ジョーカーズ」が最高だからといって、レースラフティングで世界一になることはすぐにはできないですし、同じように女子日本代表チームも、「月でミッションを完了し地球に帰還する」というプロジェクトをうまく進められるわけではないのです。
なぜならば、チームの「目的(WHY)」が変わるからです。
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