宇宙兄弟』ムッタはぐいぐい引っ張らずに「押すこと」で仲間を動かす

今回は「押す(支える)」タイプのリードが得意な、「ファシリテータ型」と「マエストロ型」の2タイプをピックアップ。両者の違いは、物事を進めるとき「成果」「プロセス」のどちらをより大切にするかどうか。
「成果も大事だけど、そこに至るまでのプロセスも大事」なら、ファシリテーター型タイプかも。『宇宙兄弟』のキャラクタ―を紹介しながら解説します。
●話題の本『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』特別連載。(毎週火・土)

ファシリテーター型(プロセス志向×押す)

「ファシリテーション」とは、「物事を容易にする/助長する/促進する」などと訳されています。
ファシリテーター型は、言葉の意味どおり支援・促進的なリードを得意とするスタイルです。
成果よりもプロセスを大事にする傾向があり、「とにかくできればよい」といった意見に対しては、「それもそうなんだけど、もう少し丁寧にやろうよ」と返すこともあるでしょう。

自分にも相手にも答えがないものを、一緒に探すアプローチも得意です。
メンバーを下や横から押してリードすることはありますが、率先垂範は苦手なので先頭に立って「私についてこい!」といったシチュエーションは好みません。
それゆえに「ついていきます!」と言われることも、ほぼありません。

カリスマ的に目立つことはなく、内向的な部分があります。 遠足でたとえるなら、目的地に向かう道のりを列の真ん中から一番うしろの間を行ったり来たりしながら、メンバーが疲れていないか、落とし物をしていないかと、目を配ることが好きな人です。

【宇宙兄弟に見る、ファシリテーター型タイプは?】

【南波六太】

本書の前シリーズとなる『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』でも、彼のファシリテーション能力に触れていますが、六太はまさに、ファシリテーター型のリーダータイプです。

その魅力をシンプルに表現するなら、「やっていることや、言っていることは全然すごく感じないけれど、彼がいるとなぜか物事がうまくいく」に尽きます。
いかなるときも相手に強制をせず、自分の意見を強権的に主張することもなく、それでも結果的に目的を果たすことができる六太。

僕が特に彼のファシリテーティブな才能を感じたのは、ISSで任務を遂行している同期の宇宙飛行士・伊東せりかが、マスコミや世間から事実無根のバッシングを受けたときのエピソードです。

せりかに対する誤解を解くのであれば、世間に向けて数々のファクトを並べ、仲間として反論することもできました。しかし六太は、起きた出来事を変えようとせず、せりかになぜ宇宙飛行士を目指したのかという「目的」を思い出してもらうことで、彼女自身の内面そのものに変化を起こしました。

このときの六太は、「目的を思い出してほしい」などと直接的な言葉は使っていません。宇宙飛行士選抜試験の仲間として過ごしたころの思い出を語り、「せりかさんの代わりは、誰にもできない」とメッセージを送っただけです。
結果、せりかは自らの考えで行動し、父親の命を奪い、多くの人を苦しめている難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬開発に向けた実験を続け、大きな成果を残すことができました。

六太が目的やプロセスを大切にする姿勢は、月面で「シャロン天文台」の建設を続ける際のフィリップ・ルイスとの会話からも読み取れます。 事故やトラブルが発生し、延々と続くシステムチェックや修復作業に、いつも陽気なフィリップもさすがに疲労の色が表れ始めます。

終わりの見えない状況に彼は、「これって意味あんのかなーって、ちょっと考えちゃったりさ」と打ち明けました。 六太はそこで、「自分のやっていることの“意味”を探す必要はない。
やったことの結果が、誰かの“意味あること”になればいいんだ」と答えます。 一見するとプロセスを無視しているように感じますが、じつは逆で、自分たちのプロセスに意味を見出そうとするからこその言葉でしょう。

この会話のあと、六太は作業をしながら、「自分が楽しんだ結果、喜ぶ人がいる。これ以上のことがあるか……?これが私の天職だ!」と考えていました。
六太にとって「楽しむ」は大切にしたい価値観の1つであり、「人に喜んでもらう」は目的です。「シャロン天文台」を完成させて、ALSと闘う人生の恩師・金子シャロンに喜んでほしい。
そしてこの天文台に設置する望遠鏡で、シャロンの亡き夫が生前に発見した小惑星「シャロン」を見せてあげたい—。そう願う六太。
支援・促進を得意とする、ファシリテーター型の彼らしいエピソードです。

「自分のやっていることの“意味”を探す必要はない」という六太の真意は、「誰かにとっては大きな意味がある」のなら、それでよいと思っているから。とはいえ自己犠牲の精神ではなく、自分が楽しむことが大前提となっているので、前へと進むパワーに変えることができるのです。(35巻#327)

マエストロ型(成果志向×押す)

マエストロ型は、自分で目標を設定し、それに向かって着実に進んでいくスタイル。
目標が明確なので成果を出すことを大切にしますが、そのためにメンバーを引っ張るというよりは、自らが取り組んでいる背中を見せることで周囲を刺激し、リードしていくのが得意です。 基本的に自分のやりたいことがブレないため、失敗しても諦めず、何度も繰り返し挑戦し、黙々と実績を積み上げていきます。そうやって成果を出すことで「すごい人だ」と信頼され、周囲を動かすパターンもあるでしょう。

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宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話

長尾彰 /小山宙哉

『宇宙兄弟』のムッタやヒビト、チーム「ジョーカーズ」の成長ストーリーなどを分析し、自分の得意なスタイルで、今いる仲間をリードする方法を解説する「#宇宙兄弟チーム本」の特別連載。 (毎週土・火 公開予定)

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valusun #スマートニュース 14日前 replyretweetfavorite