改めて、チェアリングが楽しい【スズキナオ】

パリッコさん、スズキナオさんによるユニット「酒の穴」が提唱している「チェアリング」。今回はスズキナオさんがその楽しみについて改めて書いてくれています。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

書籍化しました!

“よむ”お酒(イースト・プレス)

本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
好評発売中!
ひとり飲みや、晩酌のお伴にぜひどうぞ


思い思いに過ごす

先日、「チェアリング」をテーマにした取材を受けた。「チェアリング」はパリッコさんと私とで思い立ってやり始めた遊びで、持ち運びに便利な軽量のアウトドア椅子をたずさえて広い場所などにおもむき、ここぞと思うポイントに椅子を置き、そこに腰かけて酒を飲んだり軽食をつまんだり、思い思いに過ごすというもの。

携帯用チェアが安価に、スーパーなどでも簡単に手に入るようになったことや、それさえ手に入れればあとは特に面倒な用意もなく、自分の家の近所の原っぱなどでのんびり過ごせるという気軽さもあってか、雑誌の企画として「チェアリング」の名を提案して以来、徐々にその楽しみに共感してくれる方が増えている。

人の邪魔にならないような場所を選ぶ、とか、コンビニが近いと最高、とか多少のノウハウがあり、パリッコさんと二人、取材をしてくださった記者の方にそんなことについてとりとめもなく話した。

取材自体はスムーズに終了し、そこからは記者の方もまじえて缶チューハイを飲みながらぼーっとするという、ただ単にチェアリングしているだけの状態に突入したのだが、久々に屋外で椅子に座ってみて改めて思うところがあった。

そうだ、この感覚が最高なんだった

その日の取材は東急電鉄の二子玉川駅近く、多摩川沿いの広い公園の一角で行われたのだが、その眺めがすごくよかった。夏真っ盛り、日差しの強い場所はかなりの暑さだったが、風の通る木陰を見つけてそこに椅子を置いた。我々が座っている前方には小さな池があり、その池の向こうに芝生が広がっていて、さらにずっとその先に多摩川の流れがある。もっと向こうには、対岸の二子新地エリアにマンションが立ち並んでいるのが見え、左手に顔を傾けると二子橋が川をまたいでいて、そこを車や人や自転車が行き来するのが見える。二子橋と並行して東急電鉄の線路も伸びていて、たまにそこを電車が走っていく。その他にも、空に鳥が飛んでいくことがあったり、風が吹いて遠くの草木が揺れたりする。セミが全力で鳴いている声が聞こえている中に、子どもの笑い声が響いたりもする。そこかしこで色々なものが運動したり変化したりしている。

というか、こんな風に書き並べるまでもなく、どこであろうと、外に出て視界が開けるような場所にいたらだいたい色々なことが同時に起きているのが目に入る。あちこちから音も聞こえる。数人でチェアリングしていると、最初こそ「いやぁ、ここいいですね!」「風が通って気持ちいいな!」などとはしゃぐけど、すぐに気持ちが落ち着き、そこからは周りで進行している様々なことに注意がいくようになる。私がチェアリングの醍醐味だと思っているのは、この、心が静かになって周囲をぼーっと見るようになる状態で、しかも座っているからその状態を長時間に渡ってキープすることができる。これは、少なくとも自分にとって普段の生活の中ではそんなに味わえない時間で、チェアリングするたびに「そうだ、この感覚が最高なんだった」と新鮮に思い出す。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

酒にまつわるあれこれをゆるーく、ぬるーく、たまに真剣に書き綴る。

“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード