価値観」「信念」「世界観」チームを成長させる3つのマインドセット

マンガ『宇宙兄弟』の魅力やエピソードを、チームづくりの視点から紐解いた書籍『宇宙兄弟  今いる仲間でうまくいく  チームの話』。刊行を記念して、著者・長尾彰氏へのスペシャルインタビュー【後編】をお届けします!
【後編】では、「チームづくりは全員で取り組むもの」という思い込みについて言及するとともに、多くのリーダーが抱えている悩みについても、意識や仕掛けを変えるためのヒントを紹介。これからのチームづくりのキーワードとなる、「ナッジ理論」や「ナラティブ」とは? チームで働くビジネスパーソン必読の内容です!

長尾 彰(ながお・あきら)
組織開発ファシリテーター。日本福祉大学卒業後、東京学芸大学にて野外教育学を研究。企業、団体、教育、スポーツの現場など、約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングを実施。現在は複数の法人で「エア社員」の肩書のもと、組織開発や事業を通じた組織づくりをファシリテーションする。

その仕事、本当に「チーム」で取り組むべきもの?

前編では、「仲間をどう巻き込んでいくか」についてお聞きしていますが、「チームづくりは、メンバー全員が一丸となってやるもの」という考え方が幻想であるという長尾さんの言葉には、ハッとしました。

長尾 もちろん、情緒面としては、みんなでやったほうが楽しいというのはありますよ。
でも、みんなでやったほうが早く大きな成果を得ることができる場合と、そうじゃない場合があります。 責任が分散することでアイデアや内容が弱くなってしまったり、効率が悪くなったりするくらいなら、個人が責任を持って、その人の発想を活かしながら取り組めばいいと思います。
5人のチームでも、2人と3人の組み合わせで問題なく回っているのなら、無理にまとめる必要もありません。

「この仕事はチームでやるべきなのか」という見極めは、チームリーダーが最初にちゃんと考えておかないといけない前提条件です。
その上でチームづくりを進めていくのであれば、目的を達成するために必要なメンバーの人数や求めるスキルなども、自然とイメージできるはずです。

—具体的なスキルが求められるミッションならわかりやすいですが、そうでない場合は、どういった視点から一緒にやる仲間を見つければいいのでしょうか。

長尾 これはもう目的ごとに違ってくるので、一概には言えないです。 ただ、チームづくりを進めていく上で、相手の「価値観」「信念」「世界観」というマインドセットを知っておくといいと思います。

ざっくり説明すると、「価値観」は「好きなこと/嫌いなこと」、「信念」は「正しいと思っていること/間違いだと思っていること」、「世界観」は「美しいと感じていること/醜いと感じていること」です。 この3つを知っておくと、相手の行動の意図がわかるようになるので、誤解やすれ違いを減らすことができます。

とくに「信念」や「世界観」は、ある程度の年齢や経験を重ねないと形にならないものなので、その人の生き方が反映されています。
子どものころって、物事に対する考え方が「好き」か「嫌い」がほとんどですよね。でも中学生くらいになると、「正しいこと」や「間違っていること」が本当の意味で理解できるようになってきます。

たとえば、友だちを傷つけてはいけないとか、嘘をつかないとか。 さらに社会人になって歳を重ねていくと、「何が美しいか」が見えるようになってきます。美術館でフェルメールの絵を見て涙が出るなんて、歳を重ねたからこそつくられた「世界観」であって、その人が子どものころはきっと、美術館の外にある公園のすべり台のほうが気になっていたはずです(笑)。

この3つのマインドセットをお互いに知っておくことは、チームづくりにおいてとても重要だと僕は思っています。

「ヒト」ではなく「コト」でリードする、ナッジ思考

—リーダー職の人が抱えている「メンバーが自主的に動かない/積極的に提案をしてくれない」という声に対し、チームづくりの中で改善できることはありますか?

長尾 それは「メンバーの主体性の問題」というよりも、「リーダーがメンバーに与えたお題の設定」が間違っている可能性があると思います。
こうしたリーダーの悩みと相対しているのが、メンバー側の「提案してと言われたから提案したのに、結局否定されて終わった」というものですよね。

僕が関わった案件の中で感じたのは、社長やリーダーのチェック(決済)が最後に入るシステムこそが、提案の意欲を阻害しているという点です。
最後にチェックが入ることで、提案する側は「どんな企画なら通るか」「どう書けば書類がOKになるか」といった、いわゆる正解探しをしてしまいます。

僕はこのシステムこそが、日本の企業の生産性を落とし、イノベーションが起きにくくなっている要因のひとつだと考えています。 社長やリーダーは最初にチェックをして、OKを出したのならその後の決裁はメンバーにゆだねる。そうでなければ、結局「忖度」が生まれてしまうでしょう。

ちょっと話が反れてしまうかもしれませんが、僕は最近、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が提唱する「ナッジ理論」にとても興味を持っているんです。
「ナッジ理論」とは、直接的な指示や強制、金銭的なインセンティブを提供せずに、「ナッジ(※ひじで軽く押すという意味)」なきっかけを与えることで、人が自ら動く原理を説いています。

たとえば、コンビニのレジ前の床に貼られている、足あとマークがあります。「ここに並んでください」と指示されているわけではないのに、人は自然と足あとのマークに沿って並んでしまいますよね。 ペットボトルしか入らないゴミ箱も、「ペットボトル以外のゴミを捨てないでください」と書かれていなくても、目的を果たすことができます。

「ナッジ理論」の有名なエピソードしては、タバコのポイ捨てに頭を悩ませていたイギリスのNPO団体が、ロンドンでタバコの吸い殻入れをアンケート投票箱にしたというものがあります。
「世界最高のサッカープレイヤーは?」といった内容の質問に、「クリスティアーノ・ロナウド」「リオネル・メッシ」と書かれた吸い殻入れを用意したところ、多くの人がポイ捨てをせず、吸い殻入れに投票をしました。 ほかには、男性トイレの便器にハエの絵を描いたところ、床を汚す人が少なくなり、清掃費が削減したという事例も挙げられています。

僕の考えるチームづくりも、こうしたナッジな考え方を原則としています。

「ヒト」ではなく、「コト」でリードする—。 人を動かすのではなく、人が動くような仕掛けや環境をつくっていきましょうという意味で、チームづくりとは、メンバーが自ら成長していくための関係性と環境をつくることだと思います。

ただ、よく考えると怖いものでもあるんですよね。無自覚にそれをやらされているわけですから……。 チームづくりに関しても、集団的組織がどこまで個人に介入していいのかという点は、僕自身しっかりと考えていくつもりです。

チームづくりとは、メンバーたちと「物語」をつくること
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マンガ『宇宙兄弟』から読み解くチームづくり【特別インタビュー】

長尾彰

人気マンガ『宇宙兄弟』のエピソードを「リーダーシップ」の視点で考察し、ヒットを記録した書籍『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』(学研プラス)に続く第2弾が、ついに発売! 「リーダーの在り方」がテーマだった前作に対し、より具...もっと読む

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