今いるチームがうまくいかない」とき、あなたにできること

マンガ『宇宙兄弟』を題材にチームづくりを紐解く、話題の本『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』(学研プラス)。著者の長尾彰氏に、チームづくりの第一歩を踏み出すための極意と、本書に込めた想いを聞きました。
★本の中身を公開!「特別連載」とあわせてお楽しみください(毎週土・火に公開予定)

「よいチーム」は、働き方や仕事の仕掛けから生まれる

—本書の中で意外に感じたのは、チームづくりについて書かれた内容でありながら、「チームづくりそのものを目的にしない」と言及している点でした。これには、どのような意図があったのでしょうか。

長尾 僕はこれまで、組織開発ファシリテーターとして様々な企業や団体のチームづくりに参画してきましたが、チーム化がうまくいっていない事例としてまず多いのが、経営者が「よし、うちもチームをつくるぞ!」と、トップダウンで独裁的に決めてしまっているパターンでした。

これをやってしまうと、チームのメンバーは「上からの命令でやらされている」という意識に傾いていくので、「チームをつくること」そのものが白けてしまいます。

僕は、チームづくりとは、働き方や仕事の仕掛けを通じてチームが成長しやすい環境を整えることであり、「よいチーム」はあくまでその結果として生まれるものだと考えています。
「よいチーム」は、チームでなければ成し遂げられないビジョンやミッションが掲げられ、メンバーがそれに向けて試行錯誤を繰り返した結果、生まれるものです。あくまでも「チームビルディング」はビジョンやミッションを達成する手段のひとつに過ぎません。

とはいえ、僕自身もこれまでの経験と試行錯誤があってこそ言えるのであって、「よいチーム」をつくれば仕事の成果や業績が上がると思っていたころもありました。「ファシリテーター(支援・促進)」としてまだまだ未熟だと感じるときもあるし、組織との関わり方について色々と反省もします。チームづくりと同じく、日々、試行錯誤の連続です。

長尾 彰(ながお・あきら)組織開発ファシリテーター。日本福祉大学卒業後、東京学芸大学にて野外教育学を研究。企業、団体、教育、スポーツの現場など、約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングを実施。現在は複数の法人で「エア社員」の肩書のもと、組織開発や事業を通じた組織づくりをファシリテーションする。株式会社ナガオ考務店代表取締役、一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム理事長、NPO 法人エデュケーショナル・フューチャーセンター代表理事、学校法人茂来学園大日向小学校の理事を兼任する。著書に『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』(学研プラス)がある。
—書籍の中でも、老舗メーカーの事例が登場していますね。3代目の社長に就任予定の副社長が、若手のメンバーだけでチームをつくろうとしたところ、社歴の長い年配の役員たちの理解が得られず溝が生まれてしまいました。すると、企業を支えていた主力事業の業績が下がってしまったと……。

長尾 そうなんです。企業の「次世代を担う新しいチームをつくる」ことが目的になってしまい、役員と現場の混乱が業務に支障をきたしてしまいました。僕は副社長と一緒にチームづくりに関わっていたのですが、ほかの役員から「意味のないことをするな」と伝えられたことを覚えています。

若手のチームは活気もあり、新しいアイデアが出てそれらを自主的に実行するまでになっていましたが、ベテラン社員との連携がうまくいかず業務が混乱しては本末転倒ですよね。僕はこのとき、もっと丁寧に進めるべきだったと反省しています。

—もし今、同じ状態で「ファシリテーター」として関わるなら、今度はどのようなアプローチを試みますか?

長尾 まず社史をつくったと思います。若手がベテラン社員や役員に「〇〇さんが若いころはどんな会社だったんですか?」「当時はどんな苦労がありました?」などの話を聞いて、それをもとに社史をつくります。
歴史のある企業なので、彼らには彼らのつくってきた物語があるし、絶対にものすごい武勇伝があるはずなんですよ。それを聞きもせず、「自分たちのやっていることこそが、これからの会社を担っていく」とチームづくりを始めてしまったので、うまくいきませんでした。

社史をつくるというのはアプローチのひとつに過ぎませんが、会社の歴史を「対話」を通して振り返ることで両者の関係性や見え方が変わった可能性があります。

若手にとってベテラン社員や役員は「頭の固い人」ではなく、「会社の伝統をつくり上げ、守ろうとしている人」になるでしょうし、役員にとって若手のチームづくりは「意味のないこと」ではなく、「真摯に意見を聞き、変わろうとしている人」と感じてもらえたかもしれません。

その人が何を大事にしているのかという背景や文脈を知れば、なぜその人が怒っているのかも理解できるからです。

こうした関係性を築いた上で、「伝統を守りながら革新的なことをするには、どうしたらいいのか」をみんなで考えるようにしたと思います。僕は、そのためのファシリテーションをするべきでした。会社の背景を共有しておくことは、チームづくりにおいても大切だと思います。

今のチームに不満を抱くより、未来の出番に備えて経験を積んでおこう

—リーダー職ではない読者の中にも、「自分はチームビルディングに興味を持っているのに、上司(リーダー)が理解してくれない」という悩みを抱えている人もいるかもしれません。そういった場合、どのように周囲を巻き込んでいけばよいのでしょうか。

長尾 僕も実際に、そういった相談を受けることがよくあります。「部長にチームビルディングを提案したら、そんなヒマがあったら仕事をしろといったニュアンスのことを言われた」ですとか……。部長職やリーダー職の人が自分の組織に対して問題意識がないのは、そもそも経営に問題があるような気もしますが、アプローチを少し変えてみるといいと思います。

たとえば、「部長はこれまでの歴史の中で、チームづくりにおいてどんな苦労や工夫、成功体験がありますか? よいチームづくりをしていきたいので、ぜひ教えてください」といった聞き方にしてみる。もちろん、うわべだけでなく本当に敬意を持って聞くことが大切です。

ちなみに、部下から言われても聞く耳を持たないのに、同じことを社外の人や、異業種の社長などに言われるとすんなりと受け入れてもらえる場合もあったりしますよ(笑)。
ただこれも、チームづくりが目的にならないよう注意が必要だと思います。

自分のチームに対してイライラや悶々とした気持ちを抱えているということは、その人にとって「理想のチーム像」があり、現状とのギャップを感じているからですよね。こうした想いがあること自体は素晴らしいけれど、現在リーダー職でないのであれば、「なぜ、この人たちはチームを変えようとしないのか」と周囲に意識を向けるのではなく、自分に矢印を向けてみるのもいいかもしれません。

もともとチームのことを考えられるほどの人なのだから、必ずその出番がやってきます。そのときのために、今のポジションから色々と観察をして、「どんなチームづくりの方法があるか」のリストをつくっておくんです。
「これはしたくない/これはやったほうがいい」と感じたことや、どんなことを言われたらやる気が起きて、どんなことを言われたときにやる気を失うのか、など—。

ある程度の年齢や経験を重ねると、組織をまとめる立場を任されるようになっていくはずなので、それまでにたくさんの引き出しをつくっておきましょう。

メンバー全員がリーダーシップを発揮することは大切だし、逆説的に聞こえるかもしれないけれど、僕だったら「チームとしての責任を、あなたが無理に背負わなくてもいいんだよ。今を変えるよりも、自分がチームづくりに関わるときに、ここで得た経験を活かしてみたら? 今はそのための貴重な経験を積むチャンスだよ」と、声をかけるかもしれません。

チームづくりは、合意形成のもとに1人ずつ増やしていく

—長尾さんは、「チームづくりは、まず2人から始めよう」とおっしゃっていますが、これは「目的を達成するために、どう仲間を増やし巻き込んでいくか」にもつながりますね。

長尾 いきなりチーム全員をなんとかしようとするからハードルが高くなってしまう。何か新しいことを始めたいと思ったら、まずは1人、仲間を見つけて、2人で始めていくことをおすすめしています。

「私は今、こういうことをやりたいんだけど手伝ってもらえませんか?」と相談して、目的やミッションそのものに理解・共感してくれる人を探してみてください。
そこからさらに3人目、4人目と仲間を増やしていきます。

3人目を選ぶときのポイントは、2人で相談して「あの人がいいね」と納得した人に声をかけること。僕の経験上、それぞれが1人ずつ好きな仲間を連れてきて4人になると、うまくいかないことが多いように感じます。
なぜなら、お互いに連れてきた仲間同士が、必ずしもうまくいくとは限らないからです。全員で相談し、合意できた人に1人ずつ声をかけていくことが、仲間を増やしていく際のポイントだと思います。

—これは、すでにチームが存在しているような状態でも同じですか? 新チームの発足といった案件ではなく、すでにある組織の中で仲間を巻き込んでいくにも有効なのでしょうか。

長尾 最初から5人のチームであっても、同じように1人ずつ声をかけていけばよいと思います。ただ、無理に全員を巻き込むことが本当に必要なのかどうかは、しっかりと考えておいたほうがいいかもしれません。

「チームづくりは、メンバー全員が一丸となってやるもの」というのは、僕は幻想だと思います。まずは「やりたい」と思っている人たちだけでやればいいし、目的によっては、3人目を巻き込む必要すらないかもしれません。
目的やミッションには、それぞれに適した人数というものがあります。

「カレーをつくる」というミッションなら、人数は多くても3人ですよね。場合によっては1人のほうが効率よくつくれるかもしれません。もしこれが10人だったら、何をしていいかわからない人たちが出てきます。100人前のカレーをつくるなら話は別ですけど(笑)。

チームは目的やミッションに順じて発生するものなので、もし参加できない人がいるということは、目標設定が低すぎる可能性もあります。
「この素敵な企画に、みんなを巻き込みたい!」という気持ちは尊いものだけれど、相手から「巻き込んでほしい」と頼まれているわけではないことは、忘れないようにしてほしいです。

エベレストに登ろうとしているのに、「そもそも私、山登りが好きじゃないんです」という人を無理に巻き込むことは、お互いにとって幸せとは言えないですから。

僕が参画したチームビルディング案件でも、何かと理由をつけてミーティングに参加しない人はいました。
ほかのメンバーは「またか~」「やっぱりね」「しょうがないな」といった反応でしたが、僕は無理に参加してもらおうとはしませんでした。その人は、主体的・能動的に「参加しない」という選択をしているからです。それを否定したり、無視したりする必要はありません。

なので、ほかのメンバーたちで「来ない人はどうするか?」を相談してもらい、結果、議事録を残すことで、その人が内容をいつでも把握できるようにしておくことになりました。

限られた組織の中で、人は選べなくても、関わり方は選べます。
「巻き込む」とは対極にある「そっとしておく」というのも、ひとつの選択肢だと思います。

【インタビュー後編へ続く】8月6日公開予定

(編集/浦川史帆 取材・文/秋山美津子 撮影/布川航太)


◎cakesにて特別連載スタート 
毎週土・火 公開予定です

1回目の記事は→こちら

『宇宙兄弟』のムッタやヒビト、チーム「ジョーカーズ」の成長ストーリーなどを分析し、自分の得意なスタイルで、今いる仲間をリードする方法を解説。


この連載は、下記の本の内容を元に、cakes用に再構成したものです

この連載について

マンガ『宇宙兄弟』から読み解くチームづくり【特別インタビュー】

長尾彰

人気マンガ『宇宙兄弟』のエピソードを「リーダーシップ」の視点で考察し、ヒットを記録した書籍『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』(学研プラス)に続く第2弾が、ついに発売! 「リーダーの在り方」がテーマだった前作に対し、より具...もっと読む

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コメント

nakajiman チームづくりそのものを目的にしない https://t.co/zZjZfxJJp1 3ヶ月前 replyretweetfavorite

ito_fit 「限られた組織の中で、人は選べなくても、関わり方は選べます。」この選択肢を開いていくこと。https://t.co/2gYmN7gbek 3ヶ月前 replyretweetfavorite

ymnkzk クラシコムのエア社員もされている長尾さんのインタビューがおもしろかったです。良いチーム作りを目的にしないとか、過去の体験談とか、チーム作り好きとして学ぶ点たくさん。 3ヶ月前 replyretweetfavorite