必要ないのにやめられない「前飲み」の世界【パリッコ】

今日は気の合う仲間との飲み会。わくわくした気持ちを抑えきれなくて、ちょっと早めに出かけて0次会。なぜだかやめられないこの習慣。今回は、パリッコさんによる、ついついやってしまう「前飲み」について。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

前飲みにメリットなし

「前飲み」という言葉がありますね。いや、実際に日本語としてそういう言葉があるのかどうかは知りません。が、自分の飲み友達は、ある特定のグループだけとかではなく、誰でも自然に使ってる言葉です。
要するに、大きな飲み会やイベントごとの前に、景気付けのために酒を飲むという行為。前夜祭ではなく0次回。例えば、夜に自分の出演する音楽イベントが開催される。そんなとき、共演者や関係者の中で気心のしれた者同士で先に集まり、軽~く1時間くらい飲むとかそういう感じ。

想像していただければわかると思うんですが、前飲みは楽しい。小学生の頃、遠足の前日に、楽しみしすぎてなかなか眠れなかったなんて経験のある方は多いと思うんですが、やっぱりイベント前というのは独特のワクワク感があります。そのワクワク感の中、酒を飲むわけですよ。美味しくないわけがない。盛り上がらないわけがない。欠かすことができない。だけど僕、実は常に葛藤してもいるんですよね。「はたして前飲みって、本当にいるのだろうか?」と。
普段の何気ない飲み会ではなく、前飲みが行われるくらいの宴会となると、それ自体になんらかのテーマがあることが多いです。旧友たちと久しぶりに会える同窓会。年に一度のメンバーによる忘年会。なかなか予約が取れないお店を堪能する会。どれもこれも、1分1秒たりとも無駄にできない、スペシャルな宴であることは想像に難くありません。可能な限り明晰な状態で臨みたい。で、あるにも関わらず、楽しみすぎるから前飲みをしてしまう。子供の頃は「どうしても眠れない」だったのが、今は「どうしても酒を飲まずにはいられない」って、考えるまでもなくアル中ですよこれ。
結果、かなり早めに酔っぱらってしまい、早々に記憶がおぼろげになってしまう。あまつさえ、うとうと眠ってしまう。一体どこにメリットがありますか?

旅行前飲みと、人と会う前飲み

旅行の際、目的地に着くまでの間、電車の中で酒を飲むなんていうのも前飲みのひとつかもしれません。これは酒好きならば、むしろやらない人のほうが少ないでしょう。最高に楽しいですよね、車中飲み。知り合いの中でもちょっと粋な先輩酒飲みとなると、例えば東京から関西方面へ行くとして、いきなりは飲みはじめない。まずは買った駅弁と缶ビールを窓辺に置き、余裕のそぶりで車窓を眺めている。で、新横浜をすぎたあたりで、「あ、もうか……」なんて一言つぶやき、やっとプシュ、と缶ビールを開ける。つまり、新横浜あたりまではまだ日常の範囲内だというわけです。そこを脱し、非日常を演出する役割のひとつとして、きちんと車中飲みを楽しんでいる。一方の僕はというと、東京駅で新幹線に乗り込み、お尻が椅子に着くか否かの瞬間ですよね。プシュ、という音を響かせるのは。

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

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パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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