そちらもこちらも困っている
7月クールのドラマ、ひとまず、黒木華主演『凪のお暇』と石原さとみ主演『Heaven?~ご苦楽レストラン~』を見てみたが、続けて見ているのが前者だけなのは、後者の主演の演技を見ていると、「過剰な演技で周囲をあたふたさせる感じ」に色濃い既視感があったからで、「石原さとみがいつもの過剰な演技をしている」という状態に脳内が支配され、内容に入っていけない。それを、女優としての存在感と言うこともできるのだろうが、存在感がいつも同質であるって利点なのかどうか。『古畑任三郎』以降の田村正和がホームドラマに出ても古畑任三郎がチラついたのは、本人の演技力というよりも受け手の認識なのかもしれない。演者たちが視聴者に向ける文句があるとすれば、「前の役を引きずられても困るんですけど」、ではないか。そちらも困るだろうが、こちらも困っているのだ。
笑福亭鶴瓶に「いい話」を話させない
黒木華の『重版出来!』での新米編集者役、『獣になれない私たち』での元カレの家に居候する役を色濃く記憶しているが、それでも、最新の役にその時の記憶が滲みこんでこない。笑福亭鶴瓶が、ゲストのキーマンたちにあらかじめ取材を敢行し、スタジオに来たゲストに「実は〇〇さんに話を聞いたんやけども……」とエピソードを話しながら進行していくトーク番組『A-Studio』に黒木華が出ていた。女優・吉田羊や映画監督・中島哲也などから収集した「こう見えて意外と」系のエピソードを五月雨式にぶつけていたが、そもそも、「こう見えて」が明確ではないので、暖簾に腕押し感が強かった。
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