国内美術館で最大規模のフォロワー数! 森美術館の中の人が語るSNS運用術

2018年の美術展覧会入場者数ランキングで1位と2位を獲得した森美術館。関心を持つ人が限られると言われる現代アートの展覧会にもかかわらず、来館者数は大きく増加しています。それに寄与したのが、SNSを使ったマーケティング。森美術館のSNSフォロワー数はいまや美術館の中では日本一です。アカウントを運用する「中の人」こと洞田貫晋一朗さんは、いったいどんな戦略でSNSを運用しているのでしょうか。著書『シェアする美術』を特別掲載します。

「入場者数ランキング」躍進の秘密がここにある

私は東京・六本木の森美術館でマーケティングを担当している、洞田貫晋一朗と申します。

いま、森美術館のデジタルマーケティング戦略は、各方面から注目を浴びています。

森美術館という現代アートのプラットフォームで、デジタルマーケティングを本気でやってみたら、どんなことが起こったか? これまで私が取り組んできたことを、これからみなさんにお伝えしてまいります。

まずは次ページの表をご覧ください。2018年に開催された国内展覧会の「入場者数ランキング」(『美術手帖』調べ)です。


出典:『美術手帖』HP

ご覧のように、ランキングの1位、2位を、森美術館の企画展が占めています。

1位は、アルゼンチン出身のアーティスト、レアンドロ・エルリッヒの個展「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」で、61万人を超える来館者を記録しました。これは、2003年に開催された森美術館の開館記念展「ハピネス」(73万人)に次ぐ、歴代2位の入場者数となります。

2位は、古代から現代までの建築資料や貴重な模型、体験型インスタレーションなど400点を超える展示を集めた「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」。日本建築の9つの特質を遺伝子としてとらえ、日本のみならず国際的にどのような広がりを見せているのかを検証していく展覧会でした。建築という専門的な分野にもかかわらず、こちらは53万人を超える入場者数を記録しました。

さて、ここまで読まれて、読者のみなさんの中には、不思議に思われた方もいるかもしれません。3位の「ルーヴル美術館展」(国立新美術館)、4位の「ゴッホ展」(東京都美術館)など、国公立の美術館で開催された大規模展覧会よりも、六本木の私立美術館で開催された現代アートや建築の展覧会のほうが多くの入場者を集めているからです。

森美術館が、ここまで入場者を集めることができたのは、どうしてなのか?

その秘密は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめとした、デジタルマーケティングを駆使した戦略にあります。デジタルマーケティングが、美術館の集客に直接的な影響を与えている、つまり、来館者の層にピンポイントで効いているということです。

日本の美術館の中で最大規模のフォロワー数

私は2015年、ソーシャルメディア・マネージャーとも呼ばれるSNS管理者、いわゆる「中の人」を担当することになりました。美術館のソーシャルメディア戦略を練り、ツイッター、インスタグラム、フェイスブックなどのSNSを分析しながら、デジタルツールを駆使して戦略的に情報を発信するのが仕事です。

担当しているのは、森美術館のSNSアカウントだけではありません。六本木ヒルズの展望台「東京シティビュー」や、そこで開催される企画展のSNSも管理しています。また、新興SNSの動向をチェックし、目まぐるしく変わり続けるSNSの情報を収集するのも大切な仕事です。

ある方から、「専門的にSNSの分析と運用をしている美術館・博物館(以下、ミュージアム)は、日本では森美術館だけではないか」と言われたことがあります。確かに、国内の美術館では珍しいことなのかもしれません。

手前味噌で恐縮ですが、私がSNSの専任になり、戦略的な運用を始めてから、森美術館のフォロワー数は飛躍的に伸びました。いまではツイッターが約17万3000人、インスタグラムが約12万人、フェイスブックが約12万人、計およそ41万人のフォロワーを抱えています(2019年5月現在)。

このフォロワー数は、日本の美術館の中で最大規模です。

最高のテクニックはSNS運用の本質を理解すること

美術館のSNSを運用していたからこそ、気づいたことがたくさんあります。SNSをどのように運用していくべきか、どこに軸足を置いて発信し、どのように分析していくのがよいか、どのように組織内で共有し、周りの人の協力を得て、最終的にどのような結果が生まれるのか。

私がいまの仕事で一番重要だと思っていることを、実際の事例とともにお話ししたいと思っています。

従来のSNSに関するノウハウは、デジタルマーケティングの運用コンサルタントなど、いわゆる「プロ」によって書かれたものがほとんどです。私のような企業SNSの「中の人」が書いている、しかも美術館におけるデジタルマーケティングの紹介は、極めて珍しいのではないでしょうか。

私がSNS担当として、現場で汗を流して取り組んできたこと、自らの手で試行錯誤しながらつかんできたことは、本書を手にとってくださったみなさんの役に立つのではないかと考えています。

美術館、博物館に所属している同業の方はもちろん、企業、行政などの組織でSNSを担当されている方、個人でSNSを楽しんでいる方や、これからSNSを始めてみたいと考えている方にも、お伝えしたいことがたくさんあります。

したがって、できるだけ難解な言葉を避けてお伝えしたいと思っています。このことは、実はSNSの運用にも共通する大切なことだったりします。

現代アートの美術館におけるプロモーションの最前線を知っていただきながら、アートとSNSの相性のこと、多少の失敗談など、楽しみながら読んでもらえるような構成にしています。

美術館とアートの魅力、そしてソーシャルメディアの可能性と面白さを体感していただければ幸いです。

2018年の美術展覧会「入場者数」1位・2位を獲得した秘密がここにある

この連載について

シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

洞田貫晋一朗

森美術館のSNS運用を手掛ける洞田貫晋一朗さんの著書『シェアする美術』から、全12回にわたって連載形式で本の中身を紹介します。国内の美術館では随一のフォロワー数を誇る森美術館ですが、そこに至るまでにどんな工夫がなされてきたのでしょうか...もっと読む

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コメント

Cross_pp https://t.co/kuQuO4nN3z 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

rimo810 おっおーφ(..) 約2ヶ月前 replyretweetfavorite