羽生善治は、AIの進化も予言していた

身の回りを見渡すと、日常は不思議なほどに美しい「数」の法則にあふれている。そんな「日常にひそむ うつくしい数学」を、京都大学物理学専攻の著者が、小学生でもわかる平易な文章で解説。難しい数式は読み飛ばしても大丈夫。本連載は「日常にひそむ うつくしい数学」(朝日新聞出版)よりお届けいたします。

羽生善治は、AIの進化も予言していた


みなさんは、将棋やチェスをやったことがありますか?  将棋・チェス・囲碁などのボードゲームは、知的な遊びとして古くから愛されてきました。戦い方のパターンは無限とも言えるほど多様で、かつては人間知性の象徴のような扱いでしたが、最近はコンピューター棋士のほうが強くなってきて、AI脅威論の文脈でも取り上げられることが多くなっています。

それにしても、実際のところ、ボードゲームの試合展開は何パターンくらいあるのでしょうか?将棋については、一局の平均手数が約115手で、各局面における可能な指し手が約80通りあると言われます。この場合、局面ごとに80通りの指し方があって、それが115回繰り返されるので、全体として約80¹¹⁵のパターンがあることになり、これは1の後に0が220個続く大きさ(10²²⁰)に相当します。

ちなみに、将棋の天才として知られる羽生善治さんは、一つの局面 について打ち方の候補が80手ほど頭に浮かび、そのうち大部分を瞬時に切り捨て、最良と思われる2~3手について熟考した上で次の一手を決めるそうです。80手から数手に絞るのは直感によるものだそうですが、恐らく膨大な局面のデータが脳内に蓄積されていて、有望な候補を瞬時に選別できるのでしょう。

コンピューターと人間の勝負の幕開け

ボードゲームにおける試合展開のパターンについて学問的に議論したのは、情報理論の父クロード・シャノンが最初だとされています。彼は、1950年に書いた論文で、チェスを行うコンピューターについて考察しました。彼はまず、試合展開が何通りありうるかを試算しています。ある局面におけるチェスの駒の動かし方は30通りほどで、投了までに40手ほど指すという想定を置きました。

ここで注意ですが、将棋とチェスでは、差し手の数え方が違います。将棋では、先手が指して1手、後手が指して1手なので、2手で一巡になります。一方でチェスは、先手と後手が指して1手と数えるので、1手で一巡です。ということは、1手毎に二人が指すので、チェスの40手は将棋でいうところの80手になります。ですので、全体のパターンは約30⁸⁰通り(およそ10¹²⁰)になります。ちなみに、この10¹²⁰は「シャノン数」と呼ばれています。

彼の結論としては、局面の数があまりに多いため、力ずくで全ての可能性を調べるのはコンピューターでも到底不可能。だから、局面の良し悪しを点数化し、想定される最低点が最大となるように(ミニマックス法と呼ばれます)探索すべきだと主張しました。つまり、失敗したときの損害が小さくなるように手堅く打っていけばよいということです。

チェスの試合展開のパターン(10¹²⁰)は、将棋のパターン (10²²⁰)よりずいぶん少ないですね。もちろん、あくまで概算なので、計算前提を変えると答えも変わってきます。しかし、チェスよりも将棋のほうがパターンが多いのは事実であり、コンピューターが人間のプロ相手に勝利を収めたのも、 チェスのほうが先でした。

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日常にひそむうつくしい数学

冨島佑允

身の回りを見渡すと、日常は不思議なほどに美しい「数」の法則にあふれている。知っているようで知らなかった日常の不思議。身の回りに隠された数の神秘。そんな「日常にひそむうつくしい数学」を、京都大学物理学専攻の著者が、小学生でもわかる平易な...もっと読む

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コメント

atm_02 不正のやつここまで手込んであったんや。すごいな。わら 2ヶ月前 replyretweetfavorite

yoshinon 羽生さんは、AIの発展に寄与しているしね。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

PagannPoetry チェストーナメントにインド空軍が乗り込んでくる展開面白すぎ・・・・ https://t.co/kwBNNTizcD 2ヶ月前 replyretweetfavorite