深夜アニメこそがリアル、受験勉強はゲーム【第15回】

脳科学者・茂木健一郎さんと心理カウンセラー・長谷川博一さんが「生きづらさ」の正体を探っていく対話はさらに続きます。社会が硬直化する一方で、茂木さんが見つけた「もうひとつのリアル」とは? 公式に認められた大人たちの社会とは別に、子どもたちの世界はどんどん変わっています!
話題の書籍『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

原石のような子どもたちと 彼らを取り巻く「リアル」

茂木 僕ね、中高生と話すと、意外とまだ原石のような人たちはいるんだなと思うんですよ。

 でも、彼らが世の中に出ていくまでに、大学に行って就職していくときに、どこかでその原石の輝きが失われてしまうんじゃないかと思う。

長谷川 そうですね。中学生くらいの子も、最初は警戒してなかなか原石の輝きを見せません。大人を相手に様子を見ながら「あ、この人はいいんだ」と感じてからブワーっと出してくるような感じがします。

茂木 僕はいろんな中学校や高校に行くと、アニメの話を聞くんです。そこに彼らは一番リアリティを感じているようです。おそらく精神分析的にも興味深いものがいっぱいあると思うんですよ。特に深夜アニメには、日本の若者にとってのリアルな世界があると期待しています。

 受験のための勉強はリアルではなく、単にゲームだということは、子どもたちはもうわかってしまっている。一生懸命に「日本は良い国だ」と思おうとしているけど、その先にある仕事も、アメリカのスペースX(※44)や中国のデジタル革命のすごさに比べると、イマイチいけてないのかなと、なんとなくわかっている。一方で、深夜アニメのイノベーションの速さと現場での能力発揮の厳しさは、小中学生ならもうわかっています。学校の先生はそれを知りません。

 公式に認められた大人の社会には入れてもらえないけど、アニメの世界は、子どもたちにとっては大事な社会なんですよ。そういうアニメについてしゃべるとき、突然、彼らは火がついたように目が生き生きとしてくるんです。子どもだったら『アンパンマン』とか『おしりたんてい』、最近の女子だと、『プリキュア』。それが中高生くらいになると深夜アニメになっていく。

 深夜アニメって、物語の設定が、現実の苦しさやつらさをSF的なものや別世界に投影していて、ユングっぽい(※45)ところがあるなと思います。だから魔法使いとかが出てくる。大人が公式に認めている物語の世界よりも、彼らにとっては本気になれる場所なんじゃないかと思います。

長谷川 本当にそう思う。でも、アニメをつくっているのは大人ですから、大人の中にもやっぱり、そういう子どもの頃から秘めていた願望はあるわけですよね。魔法やパラレルワールドのような、「魅力を見出せない現実世界とは異質の別世界」を創出し、それが世界的にも受容されつつある。投影が普遍的なところは、確かにユングにつながるのかもしれません。

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生きる──どんなにひどい世界でも

茂木 健一郎,長谷川 博一
主婦と生活社
2019-07-19

この連載について

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生きる──どんなにひどい世界でも

茂木健一郎 /長谷川博一

「生きづらさ」の正体は何なのか? 現代社会の病理はどこにある? 脳科学者と臨床心理学者が出会ったとき、いのちが動きはじめ、世界の見え方が変わります──。7月19日発売の書籍を全文公開。

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