ゲーム依存が病気なら、藤井聡太七段は将棋依存【第14回】

精神疾患は社会の都合でつくられる……。「ゲーム依存」が病気だとしたら、「将棋依存」が病気とされないのは何故でしょう? 時代や国ごとに変わっていく価値観の中で、茂木健一郎さんはSNSやメディアのあり方にも異をとなえます。
茂木さんと臨床心理学者・長谷川博一さんによる話題の新刊『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

「ゲーム」依存は病気で 「将棋」依存が病気じゃないのはなぜか

茂木 僕、ゲーム依存症について調べたんです。ICD11(国際疾病分類第11版)には入りましたけど、アメリカ精神医学会のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)では、まだゲーム依存症は疾病に分類されておらず、さまざまな議論が行われています。

 仕事と両立させていれば大丈夫とか、ゲーム会社のプログラマーや開発担当者やプロのeスポーツのアスリートなら社会的に肯定される。要するに引きこもってずっとオンラインゲームをやっていて、親に養ってもらっているような人をゲーム依存症と定義すると。

 今回のWHOは、ドーパミン(※40)系のアディクション(嗜癖)の一つの例としてゲーム依存症ということを言っていますが、アディクション自体はそれが良いか悪いかはわかりません。それを言うなら藤井七段(※41)だって将棋のアディクションですから。総合的な判断をしないと、結局、あるものが病気かどうかは決まらない。だから、DSMの研究者たちは、「ゲーム依存って単独の病気じゃないでしょ」という議論をしているようです。

 でも、日本のマスコミはそういう複雑なことを伝えるより、「ゲーム依存症がWHOが認める病気になりました」という部分だけを切り取って伝えますからね。

長谷川 そうですね。DSMもICDも、両方ともずるいなあと思うところは、ある基準を必ず設けてるんですよね。診断のためには、「社会的機能不全の状態にある」という条件。だから、あることにハマっていても、それで社会生活を営むことができている、生活のために稼いでいる場合には診断してはいけないという、そういう基準を設けているんですよ。そのことが、「グレーゾーン」を広げる一因となっていると思います。

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restart20141201 "茂木 僕はずっと、刺青やタトゥーをしているから銭湯やプールに入れないのはおかしいと思っているんです。" 茂木さん、そりゃあなたが 「そういう輩」と接しない空域で生きているからなのでは? 平和依存、脳内お花畑。 https://t.co/NFig3Rc3Xx 3ヶ月前 replyretweetfavorite

nakazawaseimen 「世間は…」「普通は…」を決めてるのはその人なんだよね♪ 3ヶ月前 replyretweetfavorite

yasuhiko_tanaka ゲーム依存が病気なら、藤井聡太七段は将棋依存。 *茂木健一郎さん&長谷川博一さん|cakes https://t.co/X004Icx1H5 3ヶ月前 replyretweetfavorite