相模原障害者施設殺傷事件に寄せてー「お鍋でコトコト「優生思想」を煮詰めたら……」

3年前の今日、相模原の障害者施設「津久井やまゆり園」で殺傷事件が起こりました。19人の死者と26人の重軽傷者を出した悲惨な事件です。被告の優生思想ともとれる発言については、今日まで議論が重ねられてきました。今回は通常の配信日ではありませんが、事件に寄せた福本さんのコラムを配信します。


夏の日暮れ時、窓辺のソファーで俳優・向井理の写真集をパラパラめくる。

「ふむふむ、やっぱりかっこいい!」

亡き夫の姿がそれと重なる。

お仏壇の写真は若く凛々しく美しい青年のままだ。七月は12回目の祥月命日。生が終わる瞬間、夫は何を考えたのだろう。

夫は最期、ドラマのように、「愛してる」「ありがとう」とは言わなかった。

まるで日常の一コマが終わったのごとく、あっさりとこの世から去った。生きて去った。それだけだ。生前、彼は教師だった。悩みも苦しみも切なさもあじわう仕事だと察する。が、私たち家族は彼の愚痴を聞いたことが一度もなかった。彼は最愛の夫であり、父だったと再確認する。

でも、私は死者を責め続けた。今も時おり、

「なんで障害者の私を置いていくねん」

夫のいないこれからの人生を考えると寂しさと不安と恐怖で、この世の悲しみを独りで抱えた気になる。

心の中にできた穴は、きっと、これからもふさがらないだろう。が、いつからか、無理に埋めようとせずに開けておこうと、思うようになった。

ひょっとしたら、この穴は、この世とあの世をつなぐ糸電話のようなもの。死者の声を聴ける唯一のものだと。で、「死者の声」とはなにか。それはたった一つ。「生きたかった」だ。

この連載を書く間、私の念頭にはいつも、19人の重度障害者が元施設職員に虐殺された「相模原事件」があった。犯人は「障害者は生きていても仕方がない」と言い放った。

あれから3年、植松被告は……社会は……私たちはなにか変ったのだろうか?

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障害マストゴーオン!

福本千夏

脳性まひ者の福本千夏さん。 50歳にして就職して、さまざまな健常者と関わる中で、感じた溝を語ります。

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コメント

raikanadaa 中盤の歴史上の話にぞっとした。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

elba_isola |福本千夏|障害マストゴーオン! 内なる優生思想。自分の中のそれが何か、どこで芽を出すのか考えさせられる。 https://t.co/EPo5gcRl8T 5ヶ月前 replyretweetfavorite

tym_tomoniikiru 「優れた者とそうでない者との境目は、いくらでも作ることができる。」 5ヶ月前 replyretweetfavorite