2 辞書には何と書いてあるのか?
「目立って、見た目がよい」
話を整理するために、まず「カッコいい」という日本語の意味を、辞書で確認しておこう。
『日本国語大辞典』では、「姿、形、様子などがすぐれていて好ましい。見ばえがよい。」と説明されており、例として、『殺意という名の家畜』(河野典生著 一九六三年)の「人相、服装も、ただかっこいいというだけで、要領を得なかった」という一文が挙げられている。
『広辞苑』もこれと近く、「目立って、見た目がよい」とある。
『明鏡国語辞典』には、「姿や形、様式が(いかにも現代風で)優れていると感じさせるさま。体裁がいい。」とあり、「あのヘアスタイルがかっこいい」、「かっこいい生き方」といった例文が付されている。
いずれの辞書も、基本的に、外見の良さを評する語だとしている点では共通している。『明鏡国語辞典』の「かっこいい生き方」は、必ずしも外観だけとは言えなそうだが、自ら記している定義をそのまま当て嵌めるならば、「生き方」の「形や姿、様式」を評している、と解すべきなのだろう。
『日本国語大辞典』の『殺意という名の家畜』からの引用箇所では、このことがより明瞭で、「ただかっこいいというだけで」という表現には、〝表面的〟という否定的な意味が読み取れる。後ほど検討するが、「カッコいい」という言葉が、しばしば軽薄に受け止められるのは、この〝実質〟の欠如という印象のせいである。
「いかにも現代風で」
ところで、もう一点、『明鏡国語辞典』がわざわざカッコ付きで挿入している「いかにも現代風で」という部分はどうだろうか? つまり、古いものは、「カッコいい」とは言えないのか?