生産・流通の効率性は世界最低 漁業を蝕む根深い構造問題

日本の漁業を取り巻く問題は資源枯渇だけではない。世界水準で見て非効率で不透明な生産と流通の在り方も、その競争力を大きく削ぎ取っている。

(前回「日本の食卓から魚が消える日が現実に 資源半減で価格は2倍」の続き)

 平成も終わろうとする2018年、ある戦後の“遺産”が日本の漁業の中心で生き続けている。漁業者を大資本から解放する目的で、1949年につくられた法律、戦後漁業法だ。漁業の民主化による漁民の自主独立を目指したこの法律は、その後小さな改正はあったものの今でも基本は変わっていない。日本の漁業は漁業法の下、零細経営が温存され、効率性において諸外国に取り残されることとなった。

 日本で漁業を営む経営体の94.7%が個人だ(下図参照)。これは沿岸で漁業や養殖を行うための権利である「漁業権」を、漁業者と漁業者団体である漁業協同組合に優先的に与えることが漁業法で定められているからである。漁業権は、都道府県がまず漁協に与えてから、漁協がそれを組合員に優先的に配分しており、企業の優先順位は最下位だ。

 これまで漁業に参入しようとした企業は数多いものの、「漁業権の見返りに漁協から不透明な金を要求された」「一度参入を認められたものの、既存の組合員が後から理不尽な理由で反対し、脱退を余儀なくされた」(参入企業)などのトラブルが相次ぐ。現実的に企業は沿岸漁業と養殖からはほぼ締め出され、沖合漁業や遠洋漁業などの広域漁業のみで活動をしている。農業生産法人が1700もある農業とは大きく異なる。

 しかし、下図(再掲)で示したように水産資源が減少する中、今後個人集団を基本としたこの体制のままで日本の漁業が生き残れるはずがない。

 ピーク時に200万人を超えた日本の漁業者は、17年時点で15万人に激減。これには兼業漁師も含まれるため、実質的な数字はもっと少ないといわれる。さらに、その半数が60歳以上だ。若手の新規就業者が増えない限り、日本から漁業を支える担い手は早晩いなくなる。就業者の40%が40歳以下というノルウェーなどとは対照的だ。

 個人経営のままでは事業の拡大や効率化も難しい。「世界で高成長の養殖業ですら日本では生産量が減っているのは、日本の漁業が産業としての体を成していないから。家族を基本にした枠組みと人海戦術に頼り、投資や研究開発をせず規模の拡大ができない。さらに過疎化や高齢化で担い手がいないため、今後はますます生産量が減るだろう」と東京海洋大学の勝川俊雄准教授は指摘する。

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週刊ダイヤモンド 2018年11/24号 [雑誌]

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ニッポンの「魚」が危ない

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かつて日本で水揚げされる魚の半分を取り、消費市場としても世界一のお魚王国だった日本。しかし水産資源枯渇と日本の漁業が抱える構造問題のくびきにとらわれ、その王国は消えて久しい。日本の魚は、どこへ行くのか。 ダイヤモンド編集部・鈴木洋子 ...もっと読む

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