退社時間目前、異様に喉が乾いていることに気づく。そういえば、今日はトイレに立ったのも一度きりだ。職場だと水分補給が家よりも難しい。私は水をごくごく飲めない。一口一口、少量の水を送り込む。時間がかかるうえ、カップを倒す危険率も高いので、飲みながら仕事はできない。トイレを気にして水分をあまりとらない習慣が無意識にできてしまったかな。が、職場は、冷暖房の乾燥と六台のパソコンから出る熱が同時に来る。全身が知らぬ間に干からびている。
特に昨年、大阪北部地震後。被災障害者支援をおこなう私の職場は、みなお手すきの時間がなくなっていた。当然、入職当初はなにもできなかった私も、納品に加えて、自身で防災冊子の発注の電話をかけ、お客様対応もメールやFAXでする。震災のお見舞い品のお礼の手紙も、パソコンを使って書く。そして、避難訓練の打ち合わせや防災啓発新作DVDの広告作り、人権教育の指導案作り、と終始緊張の時間が続いていた。 そんな日々が始まる直前の二〇一八年六月、私は僧帽弁閉鎖不全症(心不全)という病名を告げられていた。
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