SNSでの攻撃を「深層心理」から読み解く【第11回】

ツイッターで「炎上」を体験したことがある茂木健一郎さん。カウンセラーの長谷川博一さんは強くバッシングする側の人たちの深層心理に、怒りや自己嫌悪を見ます。ヘイトスピーチが横行したり、保守とリベラルが分断された現代社会を「脳」の仕組みから考えると……。
発売中の書籍『生きる──どんなにひどい世界でも』を連載で全文公開。(火・木・土更新)

photo by 飯本貴子

SNSでの攻撃は 個人的な「怒り」の投影?

長谷川 今の日本社会を考える上でもう一つ押さえておきたいのが、SNS上でのバッシングです。表に出てこれでもかとひどく叩く人たちと、特に何もコメントしない人たちに極端に分かれますよね。後者のような人たちの中には、茂木さんと似ていて、ありのままを肯定しようとする姿勢の人もかなり含まれると思います。つまり、もの言わぬ多数派は見えにくい。

 一方、SNSで表立って誰かを攻撃する人たちは、相手や、その言動だけをただ攻撃しているわけではない。そこに、自分の持っている「怒り」「自己嫌悪」を投影していると私は考えます。

 ですから、SNSで表面化した反響が正しいものだとは限らないし、社会全体の代表でもないのです。

茂木 表に出てバッシングする人は、どうしてそういうことをするんですか。

長谷川 たまたまターゲットがあればそこに向かうということで表出しますが、本当は、その人の生い立ちなどから派生する何らかの攻撃性が原動力なのではないかと考えられます。深層心理的な側面から見れば。

茂木 つまり、バッシングしている対象の属性ゆえにバッシングしているのではなく、その人自身の身の回りに根本原因があるということですか?

長谷川 その人の中にあると言ったほうが近いかもしれません。

 だから、対象は変遷するわけですよ。これは極めてシンプルでかなり普遍的な仕組みだと思います。

 犯罪を犯した人たちも、突き詰めていくとそうなるんです。犯罪という形で人に刃を向けている。その刃というのは、幼い頃にその人が受けてきた傷そのものである。それを自分の親や他者に向けてしまう。

「こう生きるべき」と抑圧されて、言い返すことが十分できずに負の心性が蓄積されている。それと類似の現象が社会全般で進行しているようです。子どもたちは抑圧的な環境で過ごし、昔のような逃げ場もありません。潜在的にそういう準備性を整えた人たちが増えているのではないでしょうか。

 行動化の傾向が強ければ、表面化しやすい。身近で手軽なものの代表格がSNSというわけです。私たちの目にもとまりやすい。SNSの反響が、社会全体の反応ではなく、行動化させやすい人たちのものだという点は、前提として押さえておくべきでしょうね。

茂木 例えば、ヘイトスピーチをめぐる普通の考え方は、「ある民族的なグループがあり、そのグループはある属性を持っていて、その属性ゆえにこういうヘイトスピーチをする」というものです。本人たちもそう思っています。でも、実は、ヘイトスピーチをする人の個人的な問題がそこに投影されている可能性があるということですか?

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

脳と心で考える、生きづらさの正体

生きる──どんなにひどい世界でも

茂木 健一郎,長谷川 博一
主婦と生活社
2019-07-19

この連載について

初回を読む
生きる──どんなにひどい世界でも

茂木健一郎 /長谷川博一

「生きづらさ」の正体は何なのか? 現代社会の病理はどこにある? 脳科学者と臨床心理学者が出会ったとき、いのちが動きはじめ、世界の見え方が変わります──。7月19日発売の書籍を全文公開。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

muni83403165 超スーパー興味深回すぎた…………  3ヶ月前 replyretweetfavorite