酒市場縮小で「割り物」に依存する外食

2018年10月、東京・目黒のホテル雅叙園東京のワンフロアを貸し切って開催された酒販店による飲食店向けの商品展示会「IT's SHOW(商)TIME」。ここで最もにぎわっていたのは「WARIMONOYA」というブースだ。

「楽楽オペレーションキッチン」に並ぶ100種のコンク

 ホテルニューオータニのトップバーテンダーが、割り物(酒を割る飲み物)のバリエーションを披露するブースで、「塩昆布を入れたハイボール」など、来場者が自分の店に戻ってすぐに試せるような手軽なレシピを教えてくれるということで、常に人だかりができていた。

 「最近では『泡族』と呼ばれるウイスキーから本格焼酎まで何でもソーダで割る人が多い。そこで今回は割り物をメーンに提案したところ、非常に好評だった」と主催者の一社である榎本の榎本泰幸常務取締役は話す。

 もう一つ、カラフルな容器がずらりと並び、参加者の目を引いたのが「楽楽オペレーションキッチン」というブースだ。こちらは、「コンク」と呼ばれるソーダ等で割るための濃縮タイプのリキュールが100種類ずらりと並んでおり、さまざまなシロップとの約6000通りの組み合わせを試せるというもの。簡単に作れて味にバリエーションを持たせることができるため、人手不足に悩む飲食店のニーズに合致したようだ。

 それにしてもなぜ、酒販店の展示会でにぎわっているのが、主役の酒ではなく割り物の方なのか。背景には、消費者の嗜好と、飲食店を取り巻く環境の激変がある。

 消費者の嗜好は近年、多様化している。一昔前のように「取りあえずビール」ではなく、皆1杯目からそれぞれ好きなものを注文することが当たり前になった。

 また、健康志向の高まりで、酒を飲み物で割ってアルコール摂取量を抑えようという人も増えてきている。

 もう一つ見逃せないのが女性の飲酒習慣率の高まりだ(下図参照)。女性が好むサワーやカクテルなどをそろえる飲食店が増えたことで、割り物の重要性が増しているのだ。

 飲食店側にも事情がある。先述した消費者の嗜好の変化や健康志向もあり、居酒屋業態の市場規模は縮小傾向にある(下図参照)。

 一方で人手不足により人件費は高騰し、17年の酒税法改正で酒の過度な安売りが規制され、酒の原価率を抑えることが難しくなった。そんな飲食店にとって割り物は、メニューが豊富であるように見せつつ、酒を薄めて利益率を高めることができる便利な商品なのだ。

“進化系”のレモンサワーやうまいつまみで勝負
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週刊ダイヤモンド 2019年1/12号 [雑誌]

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-01-07

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週刊ダイヤモンド

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